約 717,953 件
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/45.html
投稿日:2009/03/31(火) 今日は少しばかり曇っていた。 部活をしてない俺は、学校が終わると真っ直ぐ家に帰る。 「ただいまー」 「おかえりなさい、健人さん」 リビングの方から明るい声がした。 栗色の髪を後ろで編んだ、綺麗な大人の人だった。 包み込むような笑顔でこちらを見つめている。 「ただいま、楓さん」 俺はエプロン姿の楓さんに頭を下げた。 楓さんが親父と再婚してからもう三ヶ月になるが、 何度見てもなぜ親父なんかと結婚したのかわからなくなるほどの美人だ。 家族として毎日一緒に過ごしているはずなのに、 まだ俺はこの人が義母だと実感できなかった。 「由香は部屋ですか?」 「ええ、健人さんが帰ってくるの待ってたんですよ」 「俺を?」 そのときパタパタと漫画のような足音と共に、 スカートをはいた三つ編みの女の子が二階から下りてきた。 ランドセルが似合うような可愛らしい年頃の少女。 最近ちょっと生意気になってきた、俺の妹の由香だ。 「由香、ただいま」 「あ、お兄ちゃんおかえり! 早く着替えてきてよ。 楓さんがケーキ買ってきてくれたんだから!」 なるほど、そういうことか。由香は甘いものに弱いからな。 母さんが死んだときは見てられないほど泣きわめいた由香だったが、 今は楓さんにすっかり懐いており、実に仲が良い。 俺はそんな妹の様子を目にするたび、ほっと安心させられるのだった。 俺が着替えてリビングに戻ってくると、 テーブルにはシンプルなイチゴショートが三つ並べられていた。 楓さんがいれてくれた紅茶の香りが心地よい。 「えへっ、いただきま~す!」 由香はフォークでケーキを三分の一ほど切ると、 クリームとスポンジの塊を小さな口に放り込んだ。 「こら、ベタベタじゃないか。行儀悪い」 俺はティッシュをとり、由香の唇の周りについた 生クリームをぬぐってやった。まったくこいつは。 「えへへ~」 恥ずかしげもなく由香が笑う。 普通、この歳だと兄貴を嫌がるもんじゃないかと思うのだが 由香は生意気になった今でも平然と俺に甘えてくる。 ひょっとして愛情が足りないのかもしれない。 「良かったわね、由香ちゃん」 楓さんもそんな俺たちを微笑ましげに眺めていた。 血の繋がりはなくても、本当の家族のような時間が流れている。 このとき確かに、俺は幸せだった。 親父は出張で週末まで帰ってこない。 その間、俺が楓さんとと妹を守らないと。 そんなことを考えつつ、俺は居間で楓さんとテレビを見ていた。 美香は風呂に入っている。 「ああ、また京一郎さんが転勤になりましたね。今度は宮崎ですか」 「単身赴任とか考えないのかしら…この夫婦」 継母と座卓で向かい合いながら、楽しい談笑の時を過ごす。 ふとテレビからそらした俺の目に、楓さんの笑顔が映った。 まだ三十路前の肌は白く、義母を実年齢よりさらに若く見せていた。 セーターの胸元は大きな肉の塊に押し上げられ、 妖艶な赤い唇が斜めに柔らかく吊り上げられている。 学校の女子などとは比べ物にならない楓さんの魅力に、 俺は思わずゴクリとつばを飲んだ。 いかん、相手は義理とはいえ母親だぞ。 ああでも美人だなぁ。親父めコンチクショー。 どこから借金のカタに連れてきたんだろう。もしくは誘拐か脅迫か。 そう考えていると、突然横から声をかけられた。 「お兄ちゃんお風呂!」 「ん――あ、ああ……」 風呂あがりの妹が、下着とタオルだけの半裸の姿で立っていた。 「こら由香、そんな格好でうろつくな。 ちゃんと足を拭け。畳が濡れるだろうが」 「も~、別にいいじゃない!」 「お前も少しは恥じらいというものをだな……」 「え~、ひょっとしてお兄ちゃん、 あたしのハダカ見てコーフンしてるの?」 「んなわけあるか、この馬鹿」 断言しよう。俺にロリの趣味はない。しかも妹だし。 「十年早いわこの幼女め。早くパジャマ着て来い、風邪ひくぞ」 俺は由香の頭を叩き、その場から排除したのだった。 「うふふ……」 「どうしました、楓さん?」 笑顔で肩を震わせる義母に俺は尋ねた。 「いや、本当に由香ちゃんは健人さんのことが好きだなあって」 楓さんは俺を羨ましそうに見て、そう言ったのだった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 夜も更け、そろそろ子供は寝る時間になった。 俺はまだ自分の部屋で漫画を読んでいた由香を捕まえて、 「もう遅いぞ、早く寝ろ!」 と妹を叱りつけた。 由香は不満そうな顔をしていたが、時間が時間だったので 大人しく漫画を片付けてベッドに飛び乗った。 よし、俺ももうすぐ寝るか。 そうして妹の部屋を出ようとすると、由香が俺の背中に声をかけた。 「お兄ちゃん!」 「なんだ」 「……眠れないの、今日は一緒に寝て」 「おいおい、そんな歳でもないだろ……」 こいつはホントに甘えん坊だなぁ。 俺は呆れて言ったが、妹は上目遣いで俺に頼み込んでくる。 「お願い、ぎゅ~っとして。ぎゅ~っと」 「はいはい……」 なんだかんだで俺も由香には甘い。 妹の狭いベッドに二人で潜り込み、注文通りに 後ろから由香の体を抱きかかえてやった。 「えへへ~。お兄ちゃん大好き!」 あーそうですか。でも俺にロリの気は(ry ついでに言うと妹属性もない。こいつチビだしな。 俺の好みはもっと大人の女性で、例えば楓さんのような…… おっと、俺は何を言っているんだ。 まあ数分も添い寝してやれば満足するだろう。 俺は小学生の妹と密着してベッドに転がっていた。 「お兄ちゃん……」 甘えるような声を由香があげる。 やっぱり甘えたい年頃なのだろうか。 親父は仕事でよく家を空けるし、母さんはもういない。 楓さんは一生懸命お母さんをしてくれてるけれど、 やっぱりまだ俺にするみたいに由香が甘えることはあまりなかった。 「お兄ちゃん……好き……」 「はいはい、嬉しいよ」 「好きだから……抱いて」 顔を赤らめる由香に、俺は白けた声で返事をした。 「抱いてるじゃん。ほら」 「違うの~! もっとしてほしいの~!」 と言っても、これ以上どうしろと言うのですか、由香さん。 妹の我がままに辟易する俺に、由香が小さくつぶやいた。 「あのね、お兄ちゃん……あたし、この前見ちゃったの」 「見たって、何をだ」 「夜中にお父さんと楓さんが……その、ベッドで……」 ――あの親父。 楓さんに手を出すだけでも極刑に値するというのに、 あまつさえそれを娘にバッチリ目撃されてやがったか。 俺は内心の動揺をよそに、由香に語りかけた。 「由香、お前にはまだ早い。もっと大きくなって好きな人ができたら お前もそのときはベッドでいっぱい抱きしめてやるといいぞ」 「あたし、お兄ちゃんが好きなの! だからあたしもあんな風にしてほしいな……って……」 ソレナンテ=エ=ロゲ(1599~1669)。 おかしいな、育て方を間違えたか。 由香は赤い顔をさらに赤らめ、息を荒くしている。 「だから、お兄ちゃん……あ、あたし……う……!」 お、赤い顔がだんだん青くなってきている。泡を吹き始めたら止めるか。 そんな兄の配慮を無視し、由香は俺の胸に肘鉄を食らわせた。 「ご、ごほっ…… !! な、何するのよ、お兄ちゃん!」 「何って、いけない妹の首を締め上げただけだが。お仕置き嫌いだっけ?」 「違うの~! こんなお仕置きはいらないの~!」 二人は狭いベッドの中、俺の腕に巻かれたままで由香が暴れる。 「まあ、なんだ」 俺はさわさわと由香の頭を撫でた。一分もそうしてると落ち着いたのか、 俺の腕の中でじっとして静かになる。 「由香は可愛いよ。あと十年もすればとっても綺麗になる。 でも俺はお前のお兄ちゃんだから、 こうやって甘えさせてやることしかできないんだ。 母さんからも頼まれたからな、お前のこと……」 「お兄ちゃん……」 やがて妹は眠くなってきたようで、俺はそっとベッドから離れた。 しかし親父と楓さんは何とかしないとな。教育に悪い。てか羨ましい。 俺が部屋を出ようとすると、その背中にまたしても声がかかった。 「お兄ちゃん……あたしが大人になったら、いいのね……?」 やれやれ。俺は微笑み、由香に言ってやった。 「ああ、楽しみにしてるから早く大きくなれよ。おやすみ」 パタン、とドアが閉められた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「――それで君の願い事は何かな?」 「あのね、あたし大人になりたい。 楓さんみたいな綺麗な女の人になりたいの!」 「どうしてだい?」 「お兄ちゃんが、あたしはまだダメって言うの。 お兄ちゃん、いつも楓さんのことばっかり見てる。 だからあたし、楓さんみたいになりたいの」 「わかったよ。君のお願い、叶えてあげよう。 だから楓さんのところに案内してくれるかい?」 「うん、いいよ!」 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 今日は冬にしては暖かい。 俺はいつものように学校を終えると寄り道もせず家に帰った。 母さんが死んだのは葬式とかで学校の連中にも知られてるから、 無理に俺を引き止めるやつはいなかった。 いつものようにカギを回しドアを開く。 「ただいまー」 「おっかえりー!」 ドタドタといつもより大きな音を立てて由香が走ってきた。 まったくこいつは、いい加減落ち着……け……。 目の前に立つ由香の姿に、俺の時が止まってしまった。 いつも通りの三つ編みが左右についた、小ぢんまりしたあどけない顔。 タートルネックのダークブラウンのセーターは走ってきた勢いで、 ぶるんぶるんと胸元で大きな二つのボールを弾ませている。 真っ白で清潔なスカートの裾から見えるのは、細くしなやかな脚。 「ゆ、由香……?」 俺の身長とほぼ変わらない由香が、そこに立っていた。 「お兄ちゃあんっ !!」 相変わらずの落ち着きのなさで、由香が俺に飛びかかってくる。 普段なら苦もないはずが、今日は危うく倒れそうになった。 「お、お前……どうしたんだ?」 今の由香は明らかに大人の体になっていた。 どう考えても一日でこんなに成長するはずがない。顔はそのままだし。 いつも見下ろしていた由香のロリ顔が、俺の真正面にあった。 豊満な胸を思いっきり俺に押しつけてきて、実に気持ちがいい。 いかんいかん、相手は妹だぞ。 首を振る俺に、由香は満面の笑みで言った。 「あのね、これ楓さんの体なんだよ! お兄ちゃん、楓さんのこと大好きだから嬉しいでしょ?」 ――とっさに俺は妹の言葉が理解できなかった。 どうなってるんだ。 追いすがってくる由香を振り切って、俺はリビングに向かった。 そこにはいつも通りの楓さんがいて、 にっこり笑って俺を迎えてくれるはずだった。 「…………!」 俺の目に映ったのは、ソファに寝転んだ赤いワンピースの少女。 気を失っているその綺麗な顔は、俺の継母のものだった。 「――しかし、やっぱり信じられんな……」 だが由香と楓さんの首が入れ替わっているのは事実だ。 あれから目を覚まして取り乱した楓さんを必死でなだめ、 俺たち三人はソファに並んで座っていた。 何でも、由香が言うには、学校の帰りに知り合った 変なにーちゃんに頼んで楓さんと入れ替えてもらったらしい。 どこの超能力者か知らないが、迷惑なことをしてくれたものだ。 早くそいつを見つけて二人を元に戻さなくては。 「とにかく由香。楓さんに謝れよ。ごめんなさいって」 「ごめんなさい……楓さんがあたしになるって思わなかったの」 素直に由香が頭を下げる。 楓さんはあれからずっと黙ったまま、由香の格好でうつむいていた。 白いシャツの上に着た可愛らしい真っ赤なワンピースが、 楓さんの大人の顔とものすごい違和感をかもし出している。 気まずい沈黙の後、楓さんが顔を上げて笑顔を作った。 「う、ううん、別にいいのよ」 見ただけで無理をしているとわかる辛い表情。 当然だろう。こんな非現実的な事件に巻き込まれたのだから。 「この手も、この足も、由香ちゃんのなのね。……可愛いわ」 自分の手足を見つめ、楓さんが口にした。 「……そう !?」 由香が身を乗り出すと、その弾みで弾力のある胸がまた揺れた。 いつも思うが、肩こらないんだろうか。 「ええ。とにかくまだお父さんは帰ってこないし、 その間にきっと元に戻れるわ」 「うん!」 「それじゃあ、お買い物行ってきますね」 由香の体で立ち上がり、バッグを手にした楓さん。 俺と由香より頭二つ分ほど背が低いが仕方がない。 しかしその格好ではご近所に何と言われるだろうか。 俺は心配になり、楓さんに言った。 「髪、おろしたらどうですか?」 「え? そ、そうですね」 編んだ髪をストレートに流し、顔と体の違和感を小さくする。 由香みたいに三つ編みにしてもいいかもしれない。 「楓さん、可愛い!」 由香がそう言ったが、誉め言葉になってないぞ、多分。 楓さんが出かけた後、俺は座ったままの由香にたずねた。 「それで、どうしてこんなことしたんだ」 「ごめんなさい……」 「いや、理由を聞いてるんだ」 俺の口調は厳しい。当たり前だ、こいつのせいで 訳のわからない事態になって、楓さんに迷惑がかかってるんだからな。 由香は三つ編みの頭をうつむかせた。 「あたし……早く大人になりたかったの……」 「――なんでだ」 「楓さんみたいな大人になったら、その……お兄ちゃんが、 あたしを好きになってくれるって……」 ……こいつは馬鹿か。やはり教育を間違えたらしい。 俺は静かな怒りを胸に、由香に言ってやった。 「いいか由香。お前は俺の妹だ。 十年経っても百年経っても、俺たちは兄妹なんだ。 だからお前が期待してるような関係にはなれない」 一字一句、はっきりと告げる。 「でも、今のあたしの体、楓さんのなんだよ! ほらあたしのおっぱい見てよ! 脚も見てよ!」 「やめろ! 楓さんの体なんだぞ!」 セーターやスカートを脱ぎだした妹を、俺は必死で押さえつけた。 くそ、やっぱり力が強くなってる。 俺が由香の両手に気を取られたときだった。 ――ちゅっ……。 由香の唇が俺のそれに押しつけられ、粘膜同士が接触した。 「えへへー。キスしちゃった」 こいつ……兄をナメやがって! 楓さんの体であることも忘れ、俺はソファの由香を上から押さえ込んだ。 「あ……お兄ちゃん……!」 たわわに実った双丘を両手で揉みしだく。 もう妹でも継母でもどうでもよかった。 ただ、この女を懲らしめてやりたい。泣かせてやりたい。 その思いに俺の頭は支配されていた。 「あ、やあ……あん……」 由香の顔が赤く染まっていた。 分厚いセーターの上からなのでよくわからないが、 揉んでいるうちに胸の先端が硬くなってきたような気がする。 俺は抵抗もしない由香のセーターとシャツを脱がせブラを剥ぎ取り、 上半身を素裸にひん剥いてしまった。 ぶるんとこぼれる巨乳が俺に勃起した乳首を晒している。 この誘惑に逆らえる男はそうはいないだろう。 俺は由香の上にのしかかると、硬い乳首を口に含んだ。 「は……やあ――おっぱい……」 上気した顔で由香が喘ぐ。 普段ランドセルを背負う少女にこの刺激はきつすぎるかもしれない。 だが俺にやめる気は皆無だった。 ペロ――ペロ……。 舌を這わせ、乳首から黒々とした乳輪、谷間の奥まで べったりと俺の唾液を塗りつけた。 きっと冷たくて気持ち悪いだろう。だが知ったことか。 「あぁ……あっ……ああっ……」 由香はずっと俺に舐められて声を上げ続けている。 ――うるさいな。 かん高い声をあげる妹に、俺は少し不愉快になった。 「はあ……ん……んんっ !?」 突然唇を奪われ、由香の目が驚きに見開かれた。 「ん……んむ、んん~っ!」 舌を入れられるのは初めてのはず。俺は舌で由香の歯をこすり、 今夜歯磨きしなくてもいいよう丹念に掃除してやった。 なぜか唾がたまってしまったので由香に送り込んで飲ませてやる。 こくん、と小さな喉が動くのが見えた。 もはや由香の目はトロンとしていて、正気が感じられなかった。 ただ俺にされるがまま、胸と口とを犯され続けた。 ――そろそろいくか。 俺は由香の真っ白なロングスカート、楓さんのお気に入りのそれを まくりあげ、紫のショーツを少しずつずり下げていった。 黒々とした毛が俺の目に飛び込んでくる。 「うわぁ……すっごい……」 まだつるつるの体だった由香にはかなりショックなのだろう。 よだれを口の端から垂らしながら、由香は熱っぽい視線で 今や自分のものになった継母の陰部を見つめていた。 ――さわっ。 「ぅあ……!」 軽く撫でてやると、もうそこはグショグショだった。 可愛らしいグロテスクな口が汁まみれで俺のモノを待っている。 熱く火照った由香の体をソファに横たえ、 俺はズボンから猛りきった自分のアレを取り出した。 息も絶え絶えの妹が俺のモノを見上げてくる。 「お、お兄ちゃ……すごぉい……」 「大丈夫さ。お前のココなら楽に入るから」 俺は自分のチンポに右手を添わせると 由香のアソコに狙いを定め、一気に奥まで突き入れた。 「あぁああっ !!」 既に洪水だった膣は難なく俺のを受け入れた。 汁まみれなのでスムーズに入ったが、締め付けはすごい。 親父にガバガバにされているのかと思ったが、決してそんなことはなかった。 ねっとりと絡みつくと同時に、処女のように俺をきつく締め上げてくる。 まあ、由香にとってはこれが初めてなんだが。 由香は未知の快感に目を細め嬌声をあげていたが、 入れた俺も余裕はなく、気を抜けば持っていかれそうだった。 (やべえ、気持ち良すぎる……) 改めて親父への怒りがふつふつとこみ上げてくる。 しかし今は俺がこのマンコをかき回してるんだ。 父性の超克、うむ実に素晴らしい。 俺は妹の中で動きながら、ひとり哲学に思いをはせていた。 俺の手が由香の腰を持ち上げ、前後に激しく往復させる。 「お、にいちゃ……あっ !! あぅんっ !!」 「由香、気持ちいいか? おマンコ気持ちいいのか?」 妹をいじめようと、わざと下品な言葉で責める。 だが由香はもう俺に逆らうこともできず、首を振るだけだった。 「あひぃ !! いい! おマンコいい! いいのぉっ !!」 細めた目から雫がこぼれ、ソファに染みを作る。 ――パンっ、パン !! パン !! 突きこむと、由香の一番奥に届く感触がする。 形がぴったりなのか、膣の深いところが俺を包み込んできて、 ぱっくりと口を開いた子宮が俺の先っぽに当たっているような気がした。 ここに俺のを注ぎこめば、俺と由香の子供ができるかもしれない。 それは今の俺にとって、とても魅力的な誘惑に思えた。 膣の中は由香の愛液にあふれ、ヌチャヌチャと激しい音をたてている。 「おにぃちゃん! らめっ! あたしらめぇ !!」 由香はもう2、3回イッている気がしたが、俺の方も限界が近づいていた。 この中に俺の子種をブチまけたい。 俺と由香が力を合わせ、楓さんの体で赤ちゃんを作るんだ。 そうすれば、今よりもっと幸せになれる。 「はぁあ、おにひっ…… !! ちゅあん !!」 由香は楓さんの両手で自分の小さな口を押さえていた。 三つ編み頭の小学生の由香の顔が俺のチンポに喘いでいる姿は とても背徳的で、それがまた俺の興奮を高めた。 俺は、舌を出して喘ぐ由香の顔を見下ろした。 「由香……! 出すっ! 出してやるぞ !!」 「だ、出すっ !? いいっ !! いひぃよぉっ !!」 生理もまだの由香に、俺の言葉の意味がわかったわけはない。 だが嬉しそうによだれを垂らす妹に、俺は兄としての愛しさを感じた。 ――グッ !!! 爪が食い込むほど腰の肉をつかんで、チンポを奥底に突き入れた。 ――ドクッ !! ビュルビュルビュルゥゥゥッ !! 「あ゙ぁあ゙あぁああ゙ぁあ゙っ !!!」 俺の人生で一番の量が由香の子宮に注がれてゆく。 実に数秒間。俺は壊れた蛇口のように、妹の中に子種を送りこんだ。 もし危険日だったら確実に孕んでしまうだろう。 「あ……あぁ、あへあへ……」 由香は絶頂を迎え、虚ろな目でこちらを見上げていた。 口から漏れるのは熱い吐息とうわ言。 痙攣する由香の汗ばんだ体を見つめながら、 俺は妹への愛情が膨らんでいくのを感じていた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 玄関のドアが開く音がした。 重そうな買い物袋を両手に抱え、子供のような楓さんが帰ってきた。 そしてリビングに入り悲鳴をあげる。 「――キャアアアアアッ !?」 「お、お兄ぃ! はぁんっ !! いいっ !!」 「由香、最高だぞ由香ぁっ !!」 既に俺たちは第三ラウンドに突入していた。 床に四つんばいになった妹に馬乗りになって、 俺はバックからグチョグチョのマンコをかき回した。 ソファと言わず床と言わず、あたりは俺たちの体液で汚れまくっている。 しかし一番汚いのは由香の性器だろう。 幾度となく俺の汁を受け止めて、由香のと混じった粘液が 突きこむたびに周りに飛び散り、結合部からもトロッと垂れる。 ボーボーの陰毛と合わさって、実に見事な陰部だった。 つい携帯のデータフォルダに収めてしまったほどだ。 「あ、あなたたちっ !! やめなさい !! やめてぇぇえっ !!」 買い物袋を乱暴に床に落とし、楓さんは叫んでいた。 こちらにまとわりついて俺と由香とを引き離そうとするが、 子供の力で大人二人をどうにかできるはずがない。 だが俺は由香からズブリとチンポを引き抜き、楓さんに笑いかけた。 「おかえりなさい、楓さん」 「な、何をしているのっ !? 由香ちゃんはまだ子供なのよっ !!」 「でも、体は楓さんのですよ。ほら、こうやって俺の精液を タップリブチ込まれても、喜んで腰を振ってるんですから」 「な、何てことするの……!」 絶望したかのように、ひざまずき顔を覆う楓さん。 だが俺も由香もこのまま終わる気は毛頭なかった。 「楓さん、そう言うんでしたら、 代わりにそっちの体を使わせてもらっても構いませんよね?」 背後から俺に両手をつかまれ、楓さんがハッとする。 「な……何するの !?」 「おーい由香ぁ。お前の体ヤっちゃってもいいよなぁ?」 「うんいいよぉ。さっきのあたしみたいにズボズボやっちゃってぇ♪」 「や、やめなさい!」 由香も加勢して、二人で赤いワンピースの少女を押さえつけた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ――ぽたり。 ソファに赤い雫がしたたり落ちた。 ヤバ、これは後で染みになるな。 そんなことを考えながら、俺は楓さんの上から幼い体を貫いていた。 「――あ、ぐぅ……!」 あまりの苦痛に必死に歯を食いしばって泣いている。 人生で二回もロストバージンする女性ってすごいよな? 普段見られない義母の泣き顔に、俺は嗜虐心をそそられた。 楓さんの中はきついなんてもんじゃなかった。 まだ生理もきてない由香の膣では俺のを全部くわえ込めるはずもなく、 半分ほど入ったところで俺は止まってしまっていた。 「い、痛いぃ……!」 「あれ、おかしいですね。いつもはあんなに親父のをねじ込まれてる はずなんですが、僕のが無理とは変ですねえ」 「お、願い……抜いてぇ……!」 大粒の涙が宝石のようにぽたりと落ちた。 「入れるか抜くか、それを決めるのは楓さんじゃありませんよ」 楓さんにのしかかりながら、俺は妹を呼んだ。 「由香。楓さんが抜いていいかって聞いてるぞ?」 「いいわけないじゃな~い。ちゃんと全部入れてあげてよ」 楓さんの顔が恐怖に歪む。 先ほどセックスを邪魔されたからか、由香は非常に不機嫌だった。 「でもこれ以上入れたら壊れちゃいそうでなぁ……」 「い~よい~よ。思いっきりヤっちゃって」 「……だそうです」 「イヤァッ、やめてぇっ !! た、助けてぇっ !!」 俺は楓さんに中途半端に入れたまま、怯える彼女を見下ろしていた。 「じゃあ楓さん、抜いてもいいですが条件があります」 条件。楓さんは震えながらも俺の話に耳を傾けた。 「今後、俺と由香のセックスを邪魔しないこと。 それが守れるなら、楓さんは俺の妹として大事に扱います」 このまま元に戻らず、立場も入れ替わったままでいろ。 俺が言ってるのはそういうことだった。 由香もこの体が気に入ったようだし、俺もこっちの方が 好きなだけ熟れた体を味わえるからありがたかった。 「い……いや……」 楓さんが泣きながら首を振る。当然だ。 だが俺は楓さんをいたぶるように腰をほんの少しだけ突き上げると、 「じゃあ、やっぱりこっちのロリマンコを俺専用にしますね」 「痛いィィィッ !! ……わかったぁ! わかりましたぁっ !!」 その誓いを聞いた俺は、血のしたたる楓さんの陰部からチンポを引き抜き、 火照った体を持て余していた由香にそれを見せつけた。 「やった~! 楓さんありがと~っ !!」 嬉しそうに笑い、由香はソファの上で獣がする服従のポーズ、 腹を見せて仰向けに転がる姿勢をとって見せた。 膣口がヒクヒクと蠢き、汁をボタボタ垂らしていた。 「良かったな、由香」 「うん! またいっぱいヤろうね、お兄ちゃん!」 笑みを浮かべた俺がその上にのしかかり、改めて膣に挿入する。 部屋の隅でしゃくり上げる楓さんを横目に、 俺たちはそれから欲望のままに何度も何度も交わったのだった。 若いっていいなぁ。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 今夜は少し冷える。 だが、うちの寝床は気温など無関係に熱い。 俺はイヤホンを耳に当て、家族の笑い声を楽しんでいた。 『――由香っ !! いいぞ、由香っ !!』 『あぁ、お父さんっ !! そこっ ! いいのォッ !!』 盗聴器から聞こえる父娘の嬌声に笑みを浮かべる。 久々に家に帰ってきたから、今日はかなり激しいな。 俺の穴も残しといてほしいものだ。ただでさえ最近は 由香の腹がポッテリと目立つようになって、遠慮してるというのに。 生まれたら由香にとっては弟か妹か、それとも自分の子供になるのか。 いや、甥か姪という線もあるな。 いずれにせよ、俺たち家族の絆が深まることは間違いない。 仕方ない。こっちで我慢するか。 俺はイヤホンを外し、さっきから一生懸命俺のチンポを舐めている 楓さんの頭を撫でてやった。 「あの……健人、さん……?」 「良かったですよ、楓さん。今日は入れてあげましょうか?」 その言葉に楓さんの頬がゆるむ。 最近は三つ編みにしているが、今は夜中なので 楓さんは長い栗色の髪をストレートに垂らしていた。 学校は意外に楽しいらしく、友達も何人かできたらしい。 対して由香は頭が小学生のまま、毎日NEET状態なので将来が不安だ。 主婦なら主婦なりに、家事を覚えさせなくては。 楓さんもあいつを甘やかしてちゃダメですよ。 可愛らしい熊さん模様のパジャマを脱がせ、水玉パンツもむしり取る。 露になった幼い割れ目に顔を押しつけ、舌で優しく愛撫した。 じらすように舌を這わせ、何とか愛液を分泌させる。 何度か突っ込んではいるものの、依然として楓さんの膣は 俺のモノを全部くわえ込める大きさではなかった。 元々が由香のつるつるマンコだから仕方ないけどな。 「ひゃうんっ !?」 指を一本入れ、ぐりぐりと動かした。 前よりこなれている気もするが、気のせいかもしれない。 小さいながらも俺の指を必死でぎゅうぎゅう締め上げてくる膣に 生命の神秘を感じ、俺は可愛い楓さんの成長に涙した。 「じゃ、入れます……痛かったらすぐ言って下さい」 こくこくと楓さんはうなずき、俺のを迎え入れた。 「ぅ、あんっ……!」 生理もきていない未熟な性器で感じているのか。 俺は楓さんの幼い体を抱きかかえてゆっくりと侵入していく。 「あ、ちょっと、待……!」 「はいはい」 俺は動きを止めた。無理強いはしない。 何たって楓さんは俺の大事な妹なんだからな。 「健人さん……」 俺の首に細い腕を回して、楓さんは俺の唇に吸いついてきた。 「ん……んむっ……ん……」 たっぷり三十秒は舌を絡め合い、楓さんは赤い顔で俺を見つめた。 そのピンクの唇が蠢き、短い言葉を紡ぐ。 「……お、兄ちゃん……きて……」 俺は喜びに顔を歪め、楓さんにそっとチンポを突きこんでやった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/86.html
投稿日:2010/02/13(土) 「あの人のことをお願いね、ソフィア」 それは、昔から母に言い聞かされてきたことだった。 だから〝この夢〟が、自分が何歳の時の出来事なのか、ソフィアにはわからなかった。 だが、目の前にいる母を見れば、なんとなく予想はつく。自分がまだ幼児だった時の記憶だろう。 昔の母は、とても美しい人だった。それが、ソフィアの成長に合わせるかのように、 彼女に若さを吸い取られるかのように、みすぼらしく、やつれていった。 今の母は、目の前にいる追憶の母とは似ても似つかない――いや、ソフィアは否定した。 母の瞳は――強い意志がこもったその瞳だけは、変わらない。 あの人――ソフィアが父と、呼ばせられている男だけを見つめている、その瞳だけは。 ◆◇◆◇◆ 結婚式を明後日に控えた、ソフィア・メイスンの目下の悩み事は、 母――ヘレン・メイスンのことだった。 「じゃあ、おばさんはまだ反対してるの?」 親友のアニーには、度々そのことを話していた。そんな愚痴をこぼせるのは、 彼女くらい(夫になるアランを除けば)のものだったから。 「反対っていうか、ここまできたら、もうどうしようもないじゃない?だから、無視って感じね」 本当に頭が痛い。このままでは、式当日に参加してもらえるかどうか…… 「大変ねぇ……なにがそんなにダメなのかしら?」 「それが分かれば苦労はないわよ……」 だから思わず、ため息が漏れ出るのも、仕方のないことではないか。今は幸せいっぱいで あるはずなのだ。愛する人と結ばれる、娘の女の幸せを、母親が曇らせてどうする。 (こういうのもマリッジブルーに入るのかしら……) 「おばさん、昔からそういうのにお堅いって感じだったけど、まさか結婚式直前までとはねぇ」 「あたしも、どこかで折れるだろう、折れるだろうと期待――って言っちゃあなんだけど、 思ってたんだけどなぁ」 そう、昔からなのだ。ソフィアの結婚や男女交際はおろか、そもそも彼女が男の子と 親しくなることにさえ、ヘレンはヒステリックに反対していた。 なにが彼女をそこまでさせるのか――ソフィアも何度か問いただしたのだが、 母は結局口を割らず、頑として譲らなかった。 そのせいで、アランとの仲をここまで持ってくるまで、ソフィアは並々ならぬ 苦労と努力をかせられたのだった。 「普通、こういうのって父親が反対するもんなんじゃないの!?」 だから思わず、怒鳴ってしまうのも、また仕方のないことではないか。聞かされる アニーには悪いが。 だが彼女は、賞賛すべき忍耐でそれを受け止めてくれた。多少、苦笑はしているが。 「じゃあ、おじさんは許してくれてるんだ?」 「うん……ただ、式には参加できないかもしれないって、残念がってたけど」 「昼間なら、多少は大丈夫なんじゃなかったっけ。おじさんの病気って」 「そうだけど、あんまり長い時間はって、母さんがね……」 また母だ。それはともかく、ソフィアの父――コーネリアスは、彼女が生まれる前から ずっと重い病気を患っている。なんの病かは、ソフィアは知らなかったが。 医学の心得があるという母ヘレンは、村で診療所を構えつつ、常に父の面倒を見ている。 そもそもこの村に両親がやってきたのも、父の治療のためだと、ソフィアは聞かされていた。 それにしても、父に対する母の献身は、恐ろしいものがある。 身体に障るからと、娘のソフィアでさえ、昼間の決められた時間の中でしか、 父に会うことを許されないくらいだ。 「ま、なるようになるんじゃない?」 うつむいて、考え事に耽っていた自分を心配してくれたのか、声が聞こえて顔をあげると、 アニーがこちらを労るような顔で覗き込んできていた。 心の中で彼女に最大限の感謝を送りつつ、 「……だといいんだけどね」 ソフィアは不安感は拭いきれずにいた。 ◆◇◆◇◆ 薄暗い夜道を歩くのは、慣れ親しんだ道とはいえ、恐怖を喚起させる。 灯りもなく、大した舗装もされていない道を、つまずくことなく歩くことはできても。 (遅くなっちゃったなぁ) あれからアニーとすっかり話し込んでしまった。 帰り際、扉の向こうにある暗闇を見つめ、アニーが泊まることをすすめてくれて、 本当はその申し出に飛びついてしまいたかった。 話し込んで遅くなったのは、正直に言って、雰囲気が悪い家に帰りたくなかった という心理があったからだろう。でも、 (それじゃあダメだ。ちゃんと認めてもらって、祝福してもらわなきゃ) 胸の前で小さく手を握ると、やっと村はずれに位置する、我が家が見えてきた。 だが妙だ。灯りがまるでついていない。確かにもう暗いが、寝入るほどの時間ではないのに。 不思議に思いながら近づいていくと、ほのかな灯りが、カーテン越しに見えた――両親の寝室だ。 灯りが分かるのはそこだけだった。あとはすべて――玄関さえも――暗かった。 (なによ。帰ってくるなってこと?) 顔をしかめて、両親――特に母親がそばにいるであろう灯りをにらんでから、扉へ向かう。 鍵をことさらゆっくりと開けて、静かに扉を開く。 今日はもう寝てしまおう。こんなことで喧嘩して、結婚についてまで色々言われるなど、 まっぴらごめんだ。 室内に入り、両親の寝室へと続く扉をにらみつけると、わずかな隙間が見えた。 ドアに、鍵がかかっていない――中が、見れるかもしれない? 両親の寝室がどうなっているのか。それは、ソフィアには全くの未知だった。 その部屋に入った記憶はないし、実際入ったことはないのだろう。 部屋には常に鍵がかけられ、窓はない。見る機会は、一生ないものだと思っていた。 それが、見れるかもしれない?足は、自然とそちらに向かっていた。 早足にならないように気をつけて、音がしないように扉をかすかに開ける。 中を覗くと、そこには―― (なんだ……) 普通の部屋があり、ベッドには父が、その側には母が立っている。軽い落胆とともに、 ソフィアはため息を吐き出した。 中を覗いてしまった軽い罪悪感に押され、その場から離れようとしたが、空気が 漏れ出る音が聞こえて、ソフィアは足を止めた。 「……ソ……フィ……ァ…」 いや、違った。自分の名前を呼ぶ声だ。呼んだのは、父のようだ。 その声から、果てしない疲労を感じて、ぎょっとする。昼間見た父からは、そんなひどいものは 感じなかった。 「なあに、父さん」 ベッドで、息も絶え絶え寝転がる父の手を握り、返した母の言葉に、ソフィアはまた驚いた。 (父さん……ですって……?) 死にそうな父と、ソフィアの名を騙り、夫を父と呼ぶ母。わけもわからず、ソフィアは 事態を見守っていたが、やっと気づいた。 ――ベッドに寝ているのが、父ではないことに。 その男は、父ではなかった。父によく似ているが、もっと老いている。死にそうなほどに。 見ているだけで、刻一刻と老いていくように。いや、 「ひっ――」 その男は、〝刻一刻と老いていた〟 見ている間に、皺がどんどん深くなり、頬がこけ、目がよどんでいく。 母が握る左腕は痩せこけ、皮と骨だけになっていった。 そして、かすかに聞こえていた、紙風船から空気が漏れ出るような音が――止まった。 「おやすみなさい……」 母は、握っていた男の手を置くと、彼にキスをして――逃げようとして、音を立てた ソフィアに気づき、目を見開いて、視線だけをこちらに向けてきた。 「ぃっ、ひぃぃぃぃ――」 その、殺意すら感じられる視線から逃れるために、抜けそうな腰を抱えて、 ソフィアは家を飛び出した。 ◆◇◆◇◆ ほの暗い、夜明け前。 ソフィアは自宅前に戻ってきていた。 森の中で見つけた、彼女でも振り回せる棒を杖のように抱え、震えて逃げ出したくなる身体を、 必死に地面につなぎ止めていた。 (確認……しなきゃ) あれはなんだったのか。 すべて、自分の幻覚だったのではないか。見間違いだったのではないか。 森の中を走り回るうちに、そう思ったのだ――いや、そうであってほしかった。 家に帰れば、普段の父と母がいてほしかった。 もうすぐ、結婚して出て行く家だとしても。いや、だからこそ。 勇気を振り絞って、ソフィアは、扉を開いた。のぞき込むが、見える範囲には誰もいない。 恐る恐る、中を進む。家の中は、出た時同様、真っ暗だった。 少し歩き、ついに何もないまま、両親の寝室の前にたどり着いてしまった。 扉は、今度はちゃんと閉まっていた。ドアノブに触れて、回す――開いた。鍵はかかっていない! ゆっくりと――人生の中で一番ゆっくりと、扉を開く。部屋の中の灯りも、消えていた。 中に、何も見逃さないように頭を振りながら、入っていく。 身体が、いっそう震えて止まらない。気をつけているのに、足音が鳴る。それが、 やけに響いて聞こえる。 怖い。怖い怖い怖い怖い―― 頭を文字が埋め尽くす頃、永い永い時を経て、先ほど男が寝ていたベッドにたどり着いた。 唾を飲み(その音もやけに大きかった)、目線だけを下に向ける。そこにいたのは、 「あか……ちゃん……?」 わけがわからない。なぜこんな所に―― 「そうよ」 後ろから聞こえた声に、ソフィアはすぐ向き直り、身構えた。案の定、母がこちらを見ている。 首に刃物を当てて―― 「わたしと――あなたの愛する人よ」 「っ!ダメぇぇえええええ」 叫び声をあげて、棒を捨て去り、母に駆け寄ろうとしたが――遅かった。 母は、何事か話してすぐ、刃物を引いた。 溢れ出る鮮血。母が倒れ、血だまりができる。ソフィアは、汚れるのもかまわずに、 母を抱き上げた。 うつろな目をした母の顔にしずくが落ちるのを見て、気がついた。泣いている。自分が。 なぜ。なぜこんなことを。 「なんで!母さんっ、どうして!?」 だが、疑問をぶつけても、母が答えられるとは思わなかった。首の傷は深い。 吐息に変な音が混じっている。 「あの人のことを、お願いね、ソフィア」 だから、はっきりと聞き取れる声で、母に告げられた時は、幻聴かと思った。 思ったが、幻では、なかった。 「母さん!今そんな――」 ことを。言葉は声にならなかった。 総毛立つとはこのことだと、全身に寒気を感じながら、ソフィアは思った。 「あっ……う……あ……?」 背筋が、自分の意志とは無関係に伸びる。口も勝手に開き、意味のない声が紡がれていく。 異変は身体だけではなかった。精神に、絵の具が垂らされていくように、何かが、 自分の心を染めていく。 (う、あ、あ、あ、あ、) 血塗られた手でもかまわず頭を抱えて、吐き気がする臭いの中にうずくまる。 今まで生きてきた二十数年の出来事。結婚して、これから送るはずだった半世紀の予想。 その価値。 すべてが塗り替えられていく。 身体が、今まで以上に大きく震えた。 大きく震えて――震えはやっと止まった。それまでに、長い時間が過ぎたわけではない。 だが、一生分とも思える時間を経て、彼女は立ち上がった。 部屋を少し見渡し、ベッドの位置を確認する。方向感覚が一度おかしくなったせいだ。 その確認した方向に歩みを進めながら、彼女は、自然と頬がほころぶのを感じた――当然のことだ。 すぐに到着し、布団を覗き込む――当然のことだ。愛しい人がそこにいるのだから。 気持ちよさそうに眠る彼を見つめて、彼女は微笑みかけた。 ◆◇◆◇◆ 背中に感じる重みが、いっそう増した上に動くのを感じて、彼女は背中に目をやった。 彼女に負ぶされた少年は、ちょうど目を開けたところだった。 「ま……ぶしぃ……なに……?」 「あれは日の光よ、コーネリアス」 「日の……光……久しぶり……見た……」 その言葉を聞いて、彼女はにやりと笑った。ほんとは笑い転げたかったが、 あやすように優しい声で少年に告げた。 「そうね。でも、もう一度寝たほうがいいわ、コーネリアス」 少年は、素直に目を閉じて、半ば寝息のような声を出した。 「はい……ママ……」 「おやすみ、愛しいコーネリアス」 しばらく、彼の寝顔を見ながら彼女は微笑んでいたが、身体を横に開き、遥か下にある、 家々を見つめた。 「さようなら、あたしの故郷」 その声は、駆け下りる風に紛れて消えていく。 再び前に――丘に向き直る。 それほど急なわけではない。若さ溢れるこの身体なら、次第に重くなる少年を 背負って行けるだろう。 それに、もし無理になったら、自分で歩いてもらえばいい。 今は、そんなことは苦にならない。むしろ、喜びが全身を満たしていた。 (今朝は……記憶がすべて失われなかった) それは、彼にかけられた呪いが解けつつある証拠だ。 解けるのがいつかは分からない。彼女が彼女であるうちでは、ないかもしれない。 だが、解けつつある。だから、他のことなどどうでもいい。どうでも―― 我知らず零れた一筋の涙は、風に吹き飛ばされ、村へと流されていった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/93.html
投稿日 2010/03/12(金) まぶたの裏に瞬いていた白光は、再び開けると嘘のように消えていた。 それがあった気配すらない。 だが、それは当然だろう。私には、目を閉じて開くまで一瞬の出来事に感じられたが、 どうやら違うらしい。 少なくとも仰向けに寝かせられて、両手足を縛られるほどの時間、気絶していたようだ。 世界が再び、暗い闇に閉ざされているのは仕方のないことだろう。 「どこ……?」 つぶやきながらも、答えは容易に予想できる。篤子の家にある地下室。 これは予想というよりも、気絶する前の状況をおさらいしただけだが。 なら、自分をこの冷たい手術台のような寝台に寝かせたのも、手足も縛ったのも、 篤子しか考えられない。意図まではわからないが。 いや、それも予想はできる。彼女が私を何のために自宅に招いたのか、私には 予想できていた。できていたからこそ、これから起きることも予想できてしまう。 それに、今の自分の状況を考えれば…… それは受け入れがたいことだ。できれば、外れていることを願うが。 『咲ちゃんは愛のあるセックスを経験すべきだよ!』 冷や汗が、額を伝った。目に入らなかったのは幸運だろう。 (冗談じゃ、ないって!) 「ふん!」 その吐息とともに、手足に力を込める。しかし、緩む気配すらない。 この先に何が待っているのか。最悪の想像ばかりが浮かぶ。 いや、でも。これをしたのが篤子ならば、さすがにそこまでは…… (精々、私の体をいじくって終わり、とか) 溜息をつき、いったん力を抜く。自力での脱出は不可能―― 「篤子!篤子なんでしょ!?」 視線を動かせる範囲には誰もいない。人の気配もしない。 「どこにいるの!?なに考えてるのよ!?離して!」 一発殴ってやる。今までも色々馬鹿げたことにつき合ってきたが、これはやりすぎだ。 「ねえ!篤子!」 しかし、返事はない。せまっ苦しい地下室に、私の声だけが反響している。 とうとう息が持たなくなって、私は一呼吸ついた。だが、それを見計らったかのように。 「目、覚めたんだね。咲ちゃん」 「篤子……!」 相手が、こちらが怒鳴ることができないタイミングで入ってきたのは明白で、 だからこそ大声を出せないことがくやしかった。 「何考えてんのよ、あんた」 「んー、そんなことよりも気にならない?」 「何が」 「例えば、今自分が裸だとか」 そんなこと。言われなくても気づいている。正真正銘の全裸であることなど。 「知ってるわよ!だから早く外して!」 だが、手足を縛られていては、裸であることをどうにもできない。だから後回しだ。 「例えば、自分とわたしの声が違う、とか」 「そんなの――え?」 それは、全くの予想外。意識の範疇から外れたことだった。 「声が……?」 言われて、初めて耳を傾ける。 「あ、あー」 正直、間抜けなことをしているという自覚はある。だが確かに違う。私の声じゃない。 「……嘘」 「咲ちゃんって、予想外のことに弱いよね。あと、なんか胸のあたり、重くない?」 「え?」 胸?しかし、考える間もなく、部屋に明かりが灯された。暗闇が取り払われ、 光になれない目を、私はしばたたかせた。 やっと目が慣れてすぐ、私はそのまま見開いた。答えが、“目の前にあった”からだ。 「……篤子?」 天井に、篤子がいる。全裸だ。 「それは鏡」 言われなくても、そんなことは分かっている。しかし、鏡ということは―― 私は、先ほどから会話をしていた人物のほうへ顔を向けた。 そこには、“私がいた”。 「どうやって……」 全く分からない。これはつまり――信じがたいことだが――私たちの体が 入れ替わったということ? 「魔法」 私がこれまで、鏡や写真では見たことのない表情を浮かべながら、篤子が入った 私は答えてきた。 魔法。確かに、篤子はそんなことを言っていたが。まさか本当だとは思わなかった。 「……それで、何するのよ」 体を入れ替えて。裸にして。手足を縛って。こんな地下室で。 「うふふ、それはねぇ……では、スペシャルゲストの登場です」 こんな状況でも、篤子の調子は普段と変わらない。それが殊更苛立たしかった。 「あんたねぇ!」 怒鳴っても、篤子は怯えない。この子のこういうところが私はたまに――「健ちゃんでーす」 「どうも」 呼ばれて入ってきたのは、篤子の彼氏だった。片方の手を後頭部に当てて、 頭など下げてくる。脳天気に、こいつらは。 「あんたね、私は今裸なのよ!つまりあんたの体が裸なのよ!」 「え?だって健ちゃんだし。何度も見られてるし。それに」 そこで、にやっと篤子は笑った。顔は私のものだというのに、背筋に悪寒が走る。 「それに、“篤子”が見て欲しくて、そうしているんでしょう?」 訝しむ間もなく。世界が――いや、私が変わった。 ………… 「……篤子」 「あれ?健ちゃん?」 いつの間にか、健ちゃんがわたしの目の前にいた。あれ、わたしどうしたんだっけ? 「篤子が、わたしに健児君としているところを見て欲しいって、呼んだんじゃない」 「あ……あー、うん。そうだったっけ」 そうだったそうだった。なんだろう、わたしぼけっとしちゃって。 それにしても咲ちゃん。よくこんなことオッケーしてくれたな。いつもなら 絶対怒鳴り返されるよ。全く、そんな怖いから彼氏も――って、あれ?咲ちゃんにいつ、 「ん、うぷ」 いけない。考え事をしている間に、健ちゃんにキスされちゃった。もう、こんな時に 考え事なんておかしいよ、今日のわたし。 あらためて集中して、わたしの歯を叩いている健ちゃんの舌を受け入れる。 この二ヶ月、早々と行為に至ったわたしたちは、いつもこのキスを欠かさない。 だから、わたしも健ちゃんもすっかり上手くなった。 あん。でも、今日はなんかいつもよりも健ちゃんが上手い。わたしはすっかり 圧倒されている。おかげで、キスだけであそこが熱くなってきた。 「へー、それがディープキスね。気持ちいいの?」 口を離さないまま、首を縦に振って咲ちゃんに答える。咲ちゃんは、こんなこと したことないだろう。 セックスがどんだけ気持ちいいか、わたしが今日咲ちゃんに―― 「ふうん、良かったね。“咲ちゃん”」 え?わたしは―― ………… 私は、咲だ。 (え?あ、いや、ちょっと!) 口の中を這い回る他人の舌の感触。もちろん、初めてだ。今まで自分がどうなって いたのか、それを考えたいのに思考はまとまらない。 どうにかして止めなければ。だが、 (あ、あふぇ、ううん) どうして、こんな気持ちになるの?頭と、股間の奥が熱い。酸欠のせい? それに、脳裏を滑るこの思い出は? 今キスをしている“健ちゃん”と、初めて軽いキスをした記憶や、手を繋いだ記憶。 色々遠回りしたけど、やっと報われ―― (待って、そんなの私の記憶じゃ……) そんな思いも構わず、流されていく。 ああん。あふん。いやん。心も口も散々滅茶苦茶にされて、私は解放された。 足りない酸素を吸い込むために喘いで、何も言えない。何も考えられない。 「どう、気持ちよかったでしょ?」 「……うん」 答えてからはっとして体を起こそうとするが、失敗する。手足を縛られていることを忘れるなんて。 「ちがっ、違うの!今のは!」 こんな私、違う。こんな気持ちよく感じる私は違う。こんな素直な私は違う。 「でも、セックスはもっと気持ちいいなんて、本当なの?“篤子”」 私が変わる。その“わたし”は、違う。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/234.html
538 名無しさん@ピンキー [sage] 2013/03/23(土) 23 14 19.27 ID z/UjmvrI Be 不倫は不義であり、事実としてそれは許されざる不貞行為である。 しかし、それを許す、許さないの判断基準は全てもう一方の配偶者に委ねられている こともまた事実なのである。 修二と尚子とは三十年を連れ添った夫婦であった。修二の事業に成功をおさめた現在 は裕福な暮らしが得られてはいるが、若い時分にはその日の米にも事欠くほどに生活は 逼迫したものであり、何度も職を転々とする修二を常に支えてきたのは尚子の血肉を売 るにも等しいほどの内助の功だったはずだった。 ところが、余計な豊かさと言うものは人心を大いに惑わせて、間違った道へと足を踏 み出させるものなのである。 修二が行きつけていたクラブに新顔で入って来た若葉という女は、手練手管を若い身 空で大いに体得していて、あれよあれよという間に修二のお気に入りから、愛人の座、 そしてとうとう本妻の座へと転がりこんでしまったわけなのである。 風格ある料亭の一室に設えられた卓に対座するのは、ひたすら小さくなるばかりの男 と、その横に並ぶ魅惑的な肉感に満ちた若い女。そしてその二人に対面するのは、苦悩 の深い縦皺を、その眉間に刻み込んだ灰がちになりつつある髪の中年女、尚子だった。 修二は、座布団を外して端坐したきりで、ひたすら俯いているばかり。時折、ちらち らと尚子の方に目を向けるが、静かに怒りを燃やす視線を感じると、すぐにまた床に目 を向けて、無言のままに唇を尖らせるのだった。 尚子の待つこの部屋に修二と若葉の二人が入室してからずっと、沈黙が流れていたが、 「……いつまでこうしていても仕方がないでしょうにね」 と、尚子は溜め息まじりに言葉をひとつだけ、ようやく吐き出していた。 すると、それにずけずけと応じたのが若葉である。 「ええ、そうですわね。本題を切り出さないと、ねえ、あなた」 修二の腕に自らの腕を絡めつつ、若葉は尚子を牽制した。 修二は、脂汗を額にいくつも浮かべながら、苦渋に満ちた表情で、 「……すまんが、尚子。私と別れてくれんか……」 やっとその言葉だけを絞り出した。 尚子は、予期していた言葉に、それでもなお耐えがたい悲痛を胸に覚えて、しばらく 目を閉じたまま、眉間に深い縦皺を浮かび上がらせていた。 「理由を教えてくださるんでしょう……?」 聞くまでもないことだとはわかっていても、それでも聞かずには終われない、と尚子 は自らをさらに追い込む台詞を促していた。 「それは、つまり、自由恋愛の結果と言うものですわ。ねえ、あなた」 にやり、と目を猫のように細めた若葉は、絡めたままの修二の腕を自らの豊満でみち みちと張り詰めた乳房にぐいぐいと誘導して押しつけていた。 「……あ、ああ」 と、だけ、やっと男は言葉を絞り出した。 尚子はしばらく天を仰いで嘆息していたが、それでも眩暈をやっと押さえつつ、若葉 に強い視線と言葉を投げた。 「でも、そんな……あなたも夫婦の中に割って入って、ひどすぎるんじゃないですか」 すると、若葉は、はいはい、と軽く前置きをしながら、 「はあ、でも、人の心なんて軽々しく移り変わっていくものじゃありませんか。それに 加えて、男の人の欲のほどを、あなたは繋ぎとめておけるだけのモノでしたかね!」 ぞっとするような冷笑を、加害者のはずの若葉は尚子に投げつけていた。 みるみるうちに尚子の顔色は青ざめていくが、言葉が空転してしまって出てこない。 そこに、さらに畳みかけるように若葉は言葉を突き刺していく。 「聞けば、あなたは修二さんよりも九つも年上で、もう来年は還暦なんですってねえ。 それに比べて修二さんはまだ五十歳よ。仕事の上でも、男としてもまだまだ現役でやっ ていかなければならないってのに、それじゃあ、あんまりじゃないかしらァ」 若葉の言は、たしかに辛辣きわまりないものだったが、尚子にとってはたしかに負い 目として厳然たる事実であった。 尚子は、顔立ちはなかなかに整ったほうではあったけれども、頬や口元は弛み、眼窩 は窪んで、首元にも余計な脂肪が巻き付いてしまっていた。いわんや、その肢体などは 言わずもがな、であった。まるで節くれだった朽木の様なのである。 それに比較して、若葉の肉体の美々しい事と言ったらなかった。 薄生地のイブニングドレスから透ける、光り輝く絹布のような肌の照りは、二十代前 半の娘あがりの女だけが持つ特権であったし、胸元の盛り上がりも腰のくびれも、臀部 の丸みの質感も、まさに女という生物の等級の最上級のそれであった。明るい金色に染 めた髪はアップに盛り上げていて、水を糧にする生業のものという印象を強く表現して いる。 惜しむらくは鼻腔がやや上向きで、唇が厚ぼったく下品な印象もないではないのだが、 それさえもまた若葉という女に強烈な野趣を与えるエッセンスになっているのだった。 ぐう、の音も出ないのが尚子の心境だったが、そこに、 「まあ、あなたも長年この人のために頑張ってくださったみたいですしねぇ、まあ、そ の分のお金くらいはご請求いただいたって構わないんですのよ。まあ、弁護士さんを通 してのほうが後腐れはないでしょうけど」 慰謝料とは言わずに慰労金と位置付けるところが若葉のしたたかなところだった。 わずかの間に、尚子の真正直な人となりを見抜いての口撃である。 「……いりません、そんなもの……一円だって……!」 プライドを深く傷つけられた尚子は、まんまと若葉に乗せられてしまっていた。 「ううん、ですわよねえ、これは大変失礼をいたしましたわ」 慇懃に微笑む若葉。修二はちらちらとその顔を見るが、若葉はまったくおかまいなし の様子だった。 「そうですよねえ、お金なんて……そんなもの、いりませんよねえ」 まさに、思う壺の展開に、口元の緩む若葉だった。これで彼女は邪魔な先妻を素裸で 追い出すことができるのだから。 と、そうしたところで、座敷奥の押入の襖ががたがたと揺れて、 「……んがァ、黙って聞いてりゃあ、好き勝手なことをほざく姉ちゃんだにィ」 野太い男の声がずん、と響いた。 驚いて視線を集中させる三人の男女の前に、がらり、と襖を開け放って、 「こうまで悪辣なもんかにィ、人間さまってやつはョ」 現れたのは、五十センチにも満たない短身と、柏のように大きく広がった手足を持っ た禿頭のさらにはつるりとした無貌の小人であった。 「な、なによ、あんた、立ち聞きなんてぇ!」 と、叫んだのは若葉だったが、 「いやいや、文句を言うのはそんなところかね、まったく、向こう見ずにも程があるじ ゃろうが……よっ!」 ぎん、と鋭い眼光を放つと、修二も尚子も若葉も、皆、身体が緊張して身動きができ なくなってしまったのであった。 「まったく、こののっぺらぼう様が気持ちよく眠ってたってぇのに、あんまりにひでぇ 話サァ、見過ごせねえじゃねえかョ」 ずかずかと、のっぺらぼうを名乗る小人は歩を進めて座卓の上に並んでいた料理をま たたく間に平らげてしまっていた。口の所在も定かではないのに。 「はぁ、そっちのわっけえ姉ちゃんがなあ、色仕掛けでそのおっさんをモノにしたって わけよネ。ひっでえ話サ」 ぶるぶると震えていたままの若葉だったが、なんとか口だけは動くようになって、 「何よ、そんなのあんたみたいな化け物には関係のないことでしょうに、ほっといて!」 すると、のっぺらぼうは、口の無いところからはあ、と溜め息を漏らして、 「化け物って……それでもおめぇみてえのよりはまだ善良なつもりだがのォ」 蓬髪をばりばりと掻きむしって、 「それになァ、離婚ってっても、それが浮気でせにゃならない場合にはョ、慰謝料って のは、そこの男だけじゃなくって、おめぇだって払う必要があるんだぞェ」 世知に長けた化け物もあればあったものだが、 「だって、その女はおカネなんていらないっていうじゃないのよっ。だったらどうしろ っていうのよぉっ!」 鼻息荒く歯を剥き出す若葉だったが、のっぺらぼうはきょろきょろと卓上を探って、 「ああ、これだな、これがいいぞナ」 盆の上にドギーバッグ用の食品ラップを見つけてそれを拾い上げていた。 そして、のっぺらぼうは、尚子の方に向きを直す。 「な……何をするんですか?」 訝る尚子に、 「まあ、いいからいいから、悪いようにゃせんよォ」 ぴっ、とラップを引き出して、卓上によじのぼると、 「せえ……のっ!」 ぱんっ、と勢いよく尚子の顔にラップを貼り付けてしまった。 「むぐ……ぐっ」 と、苦しがる尚子だったが、それも束の間。 「ほれ、取れたぞい」 びりっとそれを剥がした瞬間に、くたん、と力を失って静かに崩れ落ちる尚子の身体。 しかし、その首の上に先ほどまで存在していた顔は消失してしまい、のっぺらぼうにな ってしまっていたのだった。 「な……な……なななな何なんですかァっ!」 驚愕の悲鳴は、のっぺらぼうの腕の間、引き伸ばされたラップの面上に移動していた のだった。 途方も無い異常に思わず凍りつく若葉と修二。 「まあ、いいから、少し我慢しときなィねェ」 のっぺらぼうは尚子の顔の貼り付いたラップをつるつるとした壁に貼ると、 「さあ、次はおめぇの番だぜ」 と、若葉に近づくや、悲鳴さえもあげさせる暇もなく、その顔を尚子同様にラップで つるりと剥がしてしまったのだった。 ごろりと転がる二人ののっぺらぼうになった女の肉体と、壁に貼り付けられた各々の 顔と、固まったままの修二と、それから腕組みをして身体を揺らすのっぺらぼう。 「は……早く戻しなさいよ!」 「そうです、こんなのあんまりです」 と声を揃えて非難する若葉と尚子の顔にのっぺらぼうはぬらりとした顔を向けて、 「まあ、そうだな、それじゃあ顔を身体に戻してやらにゃあナ」 ゆっくりとした所作で、尚子の顔をぺりぺりと剥がすと、 「ちょ……あんた、そっちじゃないでしょうがっ!」 抗議する若葉を無視して、尚子の顔を金髪の薄手のドレスを纏った肉体のほうに運ん でいく。 「あ……あの、何をなさるんですか」 不安げに訊ねる尚子に、いいからいいから、とのっぺらぼうは前置きしておいて、 「んじゃ、こうだな」 尚子の顔のラップのシワをぴんと引っ張って伸ばすと、それを若葉の肉体へとぐいっ と貼り付けてしまっていた。 「やっ……やめなさいよぉぉ!」 絶叫する若葉であったが、壁に顔のまま貼り付いていてはどうしようもならない。 しばらくの沈黙の後、のっぺらぼうがラップを剥がすと、その透明な面にはもう尚子 の顔は残ってはいなかった。 そう、つまりである。 「わ……私……どうなって……?」 と、身体の自由を再び取り戻した尚子が、壁掛けの鏡を見て思わず目を瞠った。 「これ……私……なの?」 それは、若葉の若々しい肉体を得て見事に若返った尚子の姿であった。のみならず、 顔に浮かび出ていた忌まわしい皺も全てぴん、と引き伸ばされていて、シミなども無い つるりとした顔へと直っていたのだった。 思わず尚子の手は胸元の両の膨らみへと伸びていた。 「う……わ、大きい、それに形もいいし、何より全然垂れてないじゃないの、シリコン でも入っているのかしら? うふふ、すごい、ぷるぷるねっ」 大きく開いた胸元をさらに開いて、内包された乳房を確認する尚子。 「ば、バカっ、そんなのいれてないわよ、百パーまじもんよっ、金を溶かす思いでエス テに通い詰めたプロポーションなんだからぁ……っ、返せェ!」 しかし、そんな声も昂奮した尚子の耳には届かない。 「顔も小さいわねえ……ひいふうみぃ、と七頭身半はあるんじゃないかしら、うわっ、 足も長いわねぇ……ほんとに憎らしいわぁ」 先ほどまで弛緩して弛んで垂れ気味になっていた尚子の目元はきりりと引き締まり、 若い素肌に癒着することで涼やかな目元になっていた。先ほどまでの若葉がやや下品な 印象もある官能の姿であったとすれば、今の尚子は楚々とした美形と豊満な肉体を融合 した美貌の保持者ということになるだろうか。 「お腹だって、こんなに固くて引き締まっているし、お尻も……上のほうに付いてるの ねえ、驚いたわ」 裾をたくし上げたその下からは、光沢ある黒の下穿きがのぞいていた。 「ほほっ、こりゃあ眼福ってやつかナ」 のっぺらぼうも、おそらくは鼻の下を伸ばした状態か。その声にはっ、と裾を押さえ つけて振り返る尚子。 「あ、あら、すみません。はしたない格好をお見せしてしまいました」 すると、のっぺらぼうは手を振って、 「いいや、いいってことヨ、その身体はどうでェ、気に入ったかい?」 「ええ、とっても。腰の痛いのもなくなりましたし……なんだか、身体の芯の部分も、 なんというか……心なしか……潤ってるような感じなんです」 女性としての機能を存分に回復した尚子は陶然とした表情で、若葉の顔を振り返った。 「ねえ、どうですか、私のほうがよっぽどこの身体に似合うと思いませんか?」 艶然と、笑みをこぼして余裕のほどを見せつけた。 「きっ……きっ、きっ」 わなわなと震えるばかりの若葉。 「ねえ、そうですよね、人間、あんまりに怒りがこみ上げてくると、なんにも喋ること ができなくなってしまうんですよ……さっきの私みたいにね」 そして、のっぺらぼうを振り返って、 「それで、すいません。彼女のことはどうされるのですか?」 訊ねる尚子だったが、まあ、すでに大筋は理解していた。 「ん、まあ、そうだよな。こうするのが……おさまりもいいやな」 ぴりぴりと壁から若葉の青ざめた顔を引き剥がすと、 「い、いやぁ、やめなさい……やめてぇ!」 問答無用でくしゃくしゃになったままのラップを、今度はもとの尚子の白髪の浮き出 た顔へと貼り付けてしまっていた。 「……ん、と、どうでぇ、いっぺんに四十年くらい老けっちまった感想はよォ」 頬に、顎に、目じりに額に、深い皺を無数に刻んでしまった若葉は、鏡に映る我が身 の変わりように驚愕した。 「……ったっ、いたたた、腰が痛い。膝が痛い、なによ、これはぁ」 加齢により、彼女の整っているとは言い難かった顔貌は、欠点ばかりが露わになって しまっていた。ただ、品が無いばかりで積み重ねてきた熟慮がない、老人としての箔も なにも無い、実に軽薄な顔立ちなのである。 「た……しの、胸ぇ……おっぱ……ひぃ」 両手で持ちあげても、離せば力なくだらん、と垂れ下がる肉塊の下には、ぶにぶにと 気味悪く段を成す脂肪の層が補正下着の上にまではみ出している様なのだった。 背も低く、手足は節くれだっていて、数分前まで彼女の所有していたハイスペックな 肉体とはまるで比較になるものではなかった。 「あらぁ、なかなかにお似合いよ、人の亭主を横からかすめ取ろうとするずる賢い泥棒 猫にはねえ」 悪びれた台詞をわざと吐く尚子は、ヘアピンを髪から抜き取って髪を下ろして水商売 臭さを自らの容姿から払拭しつつあった。 「くそっ、なんだよ、あんたは、あんたこそ、あたしの身体盗んだ泥棒じゃないか」 と、食ってかかろうとした若葉の眼前に迫っていたのは豊かに誇らしく張り出した、 かつての彼女自身の乳房の丘陵であった。今の彼女の151センチの身長では169セ ンチとなった尚子の胸のほどにしか目線がないのだった。思わず、気押されるものを感 じ取って、若葉は半歩後ずさる。 「まあ、仕置きはこんなもんサね。元に戻りてえってんなら、こいつはおめぇにやるか らさ、まあ、好きにしてくれりゃいいだろョ」 のっぺらぼうは手にしていたラップをぽいっと若葉の方へと放っていた。 「これ……こいつのせいであたしは……こいつっ」 がたがたと震える手でラップをくしゃくしゃに引き出す若葉は、それで自らの顔を覆 っては離し、覆っては離し、を繰り返す。が、まるで顔の剥がれる気配はないのだった。 それも当然で、こんな顔を付け替えるなどという芸当が出来るのは、ひとえにのっぺら ぼうの神通力あってこそなのだ。 狂ったようにラップを引き出す若葉を尻目に、のっぺらぼうは、 「さて、最後にはおめぇだよな」 修二の金縛りを解き放ち、尚子と引き合わせていた。 尚子は、少しだけ逡巡する様子を見せたが、ほう、と瞳を揺らしながら、 「ねえ、あなた……修二さん。私、どうです、若いでしょ、綺麗になったでしょう? これなら、あなたの傍に置いてもらっても、いいですよね」 おずおずと、修二の腕を取ろうとしたが、修二はすっと、自らの手を引き、ゆっくり と首を横に振って、 「いいや、駄目だよ。君と共に歩む……その資格を私はとうの昔になくしてしまったの だからね」 たとえばそれは信頼、愛情、相互共助のためのまごころ。そういった夫婦生活に必要 なはずのものを裏切った人間はカインの末裔のように不毛の地を放浪する業罰を与えら れるのだ。 ああっ、と小さく呻いた尚子の頬から伝わったものが、ぱた、ぱた、と畳に落ちた。 と、顔にラップを巻き付けた若葉が、酸欠をおこしてばたりと昏倒してしまっていた。 「私は、彼女と一緒に生きることにするよ。心根のほどは、ご存知の通りだが、こんな 私には、きっとお似合いだろう」 そして、若葉の年老いたその身体を、長年連れ添ってきて、ついに報いることのでき なかったその身体をそっと抱き起こして、辛苦に耐えてきた固くごつごつとした指先を ゆっくりと包みこむようにさすりながら、 「君は、新しいその姿で幸せを掴んでくれないか……いや、それさえも、もう、私には 言えた義理はないね」 修二のその言葉を確認した尚子は、駆け出すように、軒をくぐり出て、夜の暗がりの 中に消えていってしまったのだった。 はあ、とのっぺらぼうは溜め息をひとつ。 「なんともね、人間というやつはおそろしく複雑怪奇にできているもんだ」 やりきれない結末に頬杖をつきながら、やれやれ、と、 「これじゃあ化け物はおまんまの食い上げだナ」
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/239.html
放課後、健太が階段を下りると、下駄箱の前は大勢の生徒で混雑していた。これから真っ直ぐ家に帰る者がいれば、部活動にいそしむ者、校舎の外で待ち合わせをする者もいる。 靴を履き替えた健太は急いで外に出ようとしたが、少々慌てていたため、前にいた生徒の背中にぶつかってしまった。 勢いよく弾き飛ばされ、地面に尻餅をつく健太。そんな彼を、一人の女が見下ろしていた。 「ちょっと。人にぶつかっておいて、お詫びの言葉はないの?」 「あ、ああ……すまん、佐藤」 健太は今しがた衝突したその女生徒、佐藤サダ子に謝った。サダ子は彼のクラスメイトで、背は低いが平均的な女子二人分の体重を誇る肥満児である。加えてとんでもない不器量で、周囲の男子たちからは「ビア樽」や「目を合わせたくない女子ナンバーワン」などといった不名誉な称号を賜っていた。 だが、皆が忘れてしまっても、健太だけははっきりと覚えていた。この娘がかつて「完璧」と称賛される優しく美麗な才女だったことを。 「まったく……女の子のお尻ばっかり追いかけてるから、そういうことになるのよ。もうちょっと気をつけなさい」 サダ子は健太に嫌味な言葉を投げかけると、巨体を揺らして帰っていった。 その冷たい態度からは、ほんの数ヶ月前まで彼女と健太が相思相愛の仲だったとは想像もできない。 (仕方ないよな。麗華は変わっちまったから……何もかも変わっちまった) 以前の恋人が去っていくのを無言で見送ると、健太は校舎の外に出た。 「健太、こっちこっちー」 呼ばれて振り返ると、そこに複数の女子生徒の姿があった。健太は笑みを浮かべ、そちらに歩を進める。四人の女子が彼を待っていた。 彼の名を呼んだのは、すらりとした長身の少女だった。名前は田中ヨシ子。細い腰に手を当てて仁王立ちし、長い手足を誇示している。しかし、不思議なことに顔だけは体型に不釣り合いなほどふくよかで、こけしを思わせるシルエットだ。 「トイレ、長かったのね。待ちくたびれちゃった」 と、ヨシ子の隣で悪戯っぽい笑顔を見せたのは、さらさらした黄金色の髪の女生徒だった。染めたのではなく、天然の金髪である。顔立ちは少し日本人離れしており、瞳はつぶらで鼻梁は高い。薄い桜色の唇で柔らかく微笑むその姿は、文句無しの美少女だった。 だが、残念なのはその体型だ。先ほど健太がぶつかって弾き飛ばされた佐藤サダ子と似たり寄ったりの肥満体なのだ。だらしなく垂れた三段腹が制服のブレザーからはみ出し、いかにも窮屈そうだった。体重は三桁に届くかもしれない。なぜか顔にだけは余分な脂肪がついていないが、そのせいでぶくぶくと肥え太った首から下が、まるで頭部と別の生き物のように見える。スリムな肢体と下ぶくれの顔をあわせ持つヨシ子とは対照的だった。 この美貌の女生徒は鈴木ノリ子。「米俵」と称される体型は別にして、顔だけ見れば学校一の器量良しだ。 「とにかく行こうぜ。麗華の車、もう迎えに来てるんだろ?」 「う、うん。いつもの場所に停まってるって……」 残った二人の少女たちが、そんな会話を交わして歩き出した。 言葉づかいが乱暴な茶髪の女子は、吉本エミリ。以前は箸にも棒にもかからない不良少女だったが、今は学年一の成績を誇る優等生である。煙草を吸いながら健太たちの勉強を見てくれる、姉御肌の頼れる才女だ。 一方、青白い顔色の小柄な女生徒は、嘉門院麗華という。 健太たち五人は、エミリと麗華を先頭に学校をあとにした。校門から少し離れたところに、大型の高級車が停まっていた。 「お待ちしておりました、麗華お嬢様」 運転手が麗華に挨拶し、彼女を丁重に車に乗せる。健太たちも中に乗り込んだ。 麗華は地味な風貌からは想像もできないほどの資産家の令嬢で、お付きのメイドや運転手など、大勢の人間を従えているのだ。 「今日はどちらに?」 「ええっと……あたしの部屋に行ってください」 「かしこまりました」 車が向かったのは、学校からほど近い場所にある高級マンションである。ここは高校に進学したのを機に、麗華の親が愛娘に与えた仮の住まいだった。 友人たちを引き連れて帰宅した麗華を、メイドの秀美が出迎えた。 「お帰りなさいませ、麗華お嬢様」 「た、ただいま、秀美さん」 「今日もお友達がご一緒なんですね。ただいま、お菓子をお持ちします」 「い、いえ、結構です。あの……今日は勉強に集中したいので、あたしが呼ぶまで部屋に入らないでくれませんか。お願いします……」 麗華は聞き取りにくい小声で言った。有名な資産家の令嬢でありながら、彼女はほとんどそれを感じさせない卑屈な態度で周囲に接する。まるで平凡な庶民が一夜にして金持ちになったかのような、物慣れない態度だった。 麗華と健太の顔をちらちらと見比べたのち、秀美は「仕方ない」とでも言いたげにうなずいた。 「わかりました。それじゃ、私はしばらくお買い物に行ってきましょう。ご用の際は私の携帯におかけ下さい、お嬢様」 「は、はい……わかりました。すみません」 忠実なメイドが出て行くと、広い家に健太と四人の少女が残された。 「それじゃ、さっそく始めましょうか。ねえ健太?」 美少女ノリ子の言葉が合図となって、皆が各々の制服を脱ぎだした。複数の少女が衣服を脱ぎ捨てていく扇情的な光景が、健太の目を楽しませる。 素裸になったスタイル抜群のヨシ子が健太の手を引き、ベッドに飛び込んだ。 「まずは私からね。健太、キスしてちょうだい」 ヨシ子は二重顎を前に突き出し、分厚い唇を近づけてきた。健太は険しい顔で拒絶する。 「絶対に嫌だ」 「もう、健太ったら。私にキスしてくれたこと、一度もないんだから。しょうがないわね。じゃあ、こっちをお願い」 健太の拒絶に残念そうな顔をしながら、ヨシ子は彼の手を自分の乳房にあてがった。女子高生とは思えない巨乳が、健太の手の中で豊かな弾力を示した。 「どう? 私のおっぱい、とびきりの揉み心地でしょ」 「ああ、最高だ。でも、お前の乳じゃないぞ。これはあいつの……」 件の話題を持ち出そうとした健太の口を、ヨシ子の繊細な指がそっと塞いだ。 「ううん、違うわ。これは私のおっぱいなの。もう私のものなの。そうでしょ?」 張りのある乳房を健太に揉まれ、時おり荒い息を吐き出しながら、ヨシ子は言った。 「最近、サイズが大きくなったのよ。健太のおかげね」 と、得意げに語って自らの豊満な体つきをアピールする。 細い腰や整ったプロポーションこそ入れ替わったときと変わっていないが、体の線は全体的に丸みを帯び、少女というよりも女の体になりつつあった。 硬く勃起した乳首を強く抓ると、ヨシ子は色っぽい声をあげて身をくねらせた。 「ああっ、そこいい。体が熱くなっちゃう」 「下も触るぞ」 「うん、お願い。いっぱい可愛がって……」 菓子パンにも似た丸顔を真っ赤にして、健太の愛撫を待ちわびるヨシ子。この少女と自分がこのような関係になるとは、以前の健太は想像さえしなかった。 そのヨシ子が、今は自分の指に性器をかき回されて、浅ましいよがり声を発している。本当に不思議なものだと健太は思った。 「あっ、あっ、すごい。健太に触られると、体がビクビクするの」 ヨシ子の女の部分は早くもよだれを垂らし、結合の準備を整え始めていた。桜色に染まった肌に舌を這わせ、健太は最愛の少女のものだった肢体の味を楽しむ。 その首に載っているのは別人の頭部だが、首から下は紛れもなく「彼女」の体なのだ。 「ヨシ子ばっかりずるい。私も健太としたいのに」 突然、横から割り込んできた美少女の顔に、健太は少なからず驚いた。それは、いま健太が相手をしているはずの「彼女」の顔だったからだ。 「れ、麗華?」 「違うわ、私はノリ子。あれからもうだいぶたつんだから、間違えないで」 黄金の糸で編んだような美しい髪を強調しながら、ノリ子は答えた。 繊細な顔立ちも麗しい金髪も、もとは「彼女」のもの。しかし今はノリ子のものだ。学校一の美少女となった肥満児が、健太とヨシ子の間に割り込んでいた。 「ヨシ子だけじゃなくて私にもしてよ、健太」 「あ、ああ……じゃあ、キスしてやる」 健太はノリ子の細い顎をつかみ、可愛らしい唇に自らのそれを重ねた。満足げに目を細めるノリ子の口内に舌を差し入れ、音を立てて唾液を味わう。 「ん……健太のキス、いやらしい。んっ、あんっ」 ノリ子は艶やかな「彼女」の声で歓喜した。中身こそ別人だが、その声も顔も「彼女」のもの。記憶の中の「彼女」が決して見せなかった淫猥な表情を前にして、健太の牡が立ち上がった。 「あっ、健太のチンポが当たってる。お願い、もっと私の体をいじって。ああっ、あんっ」 「健太、もっとキスして。もっと私を味わって」 体だけの「彼女」と頭部だけの「彼女」を同時にもてあそぶことで、健太の中で得体の知れない興奮が生まれる。健太の心をかき乱すのはヨシ子でもノリ子でもなかった。二人が持っている「彼女」の一部だった。 「もう我慢できねえ。入れるぞ、ヨシ子」 すっかり奮い立った健太は、ヨシ子の細い腰をつかみ、正面から己のものを突き入れた。健太によって女にされた「彼女」の入り口が広がり、彼を一気に飲み込んだ。 「おほおっ、入ってきたわ。健太が私の中に……ぶひいっ」 ヨシ子の下品な喘ぎは獣じみていて、情緒の欠片もない。豚を犯している気分になった。健太は相手を気づかうことなく、腰を乱暴に叩きつける。喜んでいるのか苦しんでいるのかもわからないヨシ子の鳴き声を聞きながら、男の欲望を存分に満たした。 激しく絡み合う健太たちを、手持ち無沙汰のエミリと麗華が座って眺めている。 「おい、早く交代してくれよ。あたしも早く健太とヤリたくてウズウズしてるんだから」 「あ、あたしも……健太君と、その、したいです」 二人は頬を赤くして、愛する健太を待ちわびていた。 ヨシ子、ノリ子、エミリ、麗華。まるでタイプは異なるが、皆、健太のことが好きで好きで仕方ないのだ。 こんなことになってしまったのは、四人が「彼女」の恋心を植えつけられたためである。 「女の子にとって一番大切なもの……それは恋する心です。麗華さんの恋する心を、あなたたちのそれと交換してあげましょう。これが僕の最後のマジックです」 あの日、「彼女」の魅力を一つずつ剥ぎ取り、バラバラにした黒衣の占い師は、そう言って「彼女」と四人の恋心を交換した。だが四人は誰にも惚れていなかったために、健太を愛する「彼女」の想いだけが一方的に四人に移植されることとなった。 その結果、「彼女」は健太に対する一切の好意を失い、代わりに「彼女」から魅力を奪った四人の娘が健太を恋い慕うようになってしまったのだ。 以来、健太は自分に迫ってくる少女ら全員と関係を持ち、その中から一人を選ぶでもなく、堂々と全員と交際している。 「どうだ、ヨシ子。俺のチンポはそんなにいいか?」 健太はかつての恋人の体を持つクラスメイトに問いかけた。 「は、はい。最高ですっ! ぶひいっ、もっとしてえっ」 「この豚がっ! 麗華の体でスケベなことばかりしやがって! あの日、お前が麗華と体を入れ替えなきゃ、こんなことにはならなかったんだぞっ」 「そ、そうです。こんなに気持ちいい体になって、とっても幸せなのおっ! あう、すごいっ!」 ヨシ子はよだれを垂らして喘ぎ、たくましい少年のペニスを堪能していた。 彼女に言わせると、こうして健太とまぐわっているときが、一番、現在の自分の身体を自分のものだと実感できるのだという。 すなわち、この行為はヨシ子にとって意中の相手との仲を深めるだけでなく、もとは他人のものだった首から下の肉体を自分に馴染ませる儀式なのである。 「彼女」の肢体を奪った醜い女を貫きながら、健太は言いようのない背徳感と征服感とに燃えていた。 「ああ……麗華、麗華っ!」 傍らのノリ子と接吻を交わしつつ、愛する少女の名を呼ぶ。最初の波がやってきた。 「おら、出すぞっ! 中出しだ、麗華っ!」 熱い塊が健太の先端から噴き出し、少女の胎内に叩きつけられる。ヨシ子の体がびくんと跳ねた。 「うほっ、出てる。イクっ、イっちゃう。中出しイクっ」 「彼女」の美しい身体の上で、ヨシ子の頭部が鼻息荒く絶頂に達した。 射精を終えた健太は、半ば気を失っているヨシ子から一物を引き抜く。新しい所有者によって性感帯を開発された少女の体が、濃厚な牝の臭いを放っていた。 「気持ちよさそうだなあ、ヨシ子。私だって、ダイエットさえすれば……」 健太とのキスで興奮した様子のノリ子が、ヨシ子を羨ましげに見つめた。 ノリ子も健太の愛人の一人だが、とてつもない肥満体のためセックスに及ぶことは滅多にない。もっぱら口で健太に奉仕する係である。「もっと痩せれば相手をしてやる」と健太は言っているのだが、ノリ子にはそれができないらしい。 「終わったみたいだな。やっとあたしたちの出番だぜ、麗華」 「すごい……ヨシ子、失神してる」 健太の背中に裸体を押しつけてきたのはエミリと麗華だ。 バストこそヨシ子ほどではないが、エミリは肉づきのいい魅力的なボディの持ち主だった。 一方の麗華は小柄で幼児体型。以前は青白い顔色と長い前髪のせいでクラスの男子たちからは敬遠されていたが、「彼女」の名前と立場を手に入れてからは、前髪を切って服装にも気をつかうようになり、随分と明るくなった。 惚れた相手に尽くすタイプのようで、健太の言うことは何でも聞き入れてくれる。彼に命じられるまま一行のスポンサーとなって、皆に遊ぶ金を提供しているのが彼女だった。 「麗華、こっちに来いよ。そんであたしの上に乗りな」 エミリは麗華の小さな体を抱きかかえ、自らは仰向けに寝転がった。二人の女子高生が抱き合い、仲良く健太に秘所を晒した。 「な、何するの、エミリ?」 「たまには麗華と一緒にしてみたくなったんだよ。なあ、健太、あたしの考えてること、わかるだろ?」 「ああ、わかってる。味くらべだろ」 健太はエミリの意図を察し、鈍い光を放つ男性器を二人の体の隙間に突っ込んだ。柔らかな二人の腹の肉に挟まれ、若いペニスはすぐさま活力を取り戻す。 ヨシ子のエキスで濡れた健太のものを、先に受け入れたのはエミリだった。 「んん……健太のチンポ、まだまだ元気じゃねえか。あたしの中をゴリゴリしてきやがる」 「そりゃ、日頃から鍛えてるからな。こんな風に」 健太の切っ先がエミリの奥へと分け入り、子宮をぐいぐいと圧迫する。素行不良の優等生の顔が歓喜に歪んだ。 「はあっ、それいい。一番奥に当たってる。あんっ、あんっ」 リズミカルに腰を動かして秘部の最奥まで抜き差しする健太に、エミリはたちまち魅了される。学校の教師たちが手を焼く問題児の女生徒も、健太にかかれば赤子同然だった。 「エミリの中、すっげえ熱い。肉が絡みついてくる」 「あっ、ああんっ。そんな、そんなこと言うなあ……」 「そろそろいいか。お次は麗華だ」 健太はピストン運動を中止し、ゆっくりとエミリの中から抜け出た。そして硬いままのペニスを、今度は麗華に突き入れる。 「ああっ、健太君があたしの中に……」 「麗華の中は狭くてきついな。動くのも大変だ」 小柄な麗華の女性器は、当然のことながら狭い。太い健太のものを受け入れるのは大変だろう。 しかし、健太は麗華の体を押さえ、容赦なく彼女の中を往復した。ヨシ子、エミリ、そして麗華の愛液が健太の汁と混じり合って泡だつ。 「ううっ、健太君。健太君……」 「ははは、サダ子の顔、だらしなく緩んでるぞ。普段は大人しいくせにエロいやつだ」 「酷い。あたしはもうサダ子じゃなくて麗華だって言ってるのに……ああっ、ダメっ」 「お前は麗華じゃない。サダ子だ。あいつの名前だけもらっても、サダ子はサダ子だろ」 バックスタイルで麗華を犯しながら、健太は相手の本当の名を呼んだ。こうすることで、この少女の性感が高まるのを彼はよく知っていた。 麗華の膣内が適度にほぐれてくると、また交代してエミリの締めつけを堪能する。 二人の女子高生を代わる代わる味わうことで、再び射精の欲求が湧き上がってきた。 「おおっ、出すぞ。中に出してほしいのはどっちだ !?」 「あ、あたしがいいっ」 二人は異口同音に答えた。それを聞いて、まずは麗華に子種を植えつけた。濃厚な白濁が少女の胎内を焼き、若く健やかな子宮に無数の精子を送り込んだ。 「ああっ、健太君が中に出してる。熱いよ。こんなに出されたら赤ちゃんできちゃう……」 満足そうに吐息をつく麗華から急いで抜け出て、エミリに残りの精を注ぎ込む。健太の遺伝子が灼熱のマグマとなって、エミリの体内に飲み込まれていった。 「んんっ、中出しされてる。あたし、健太に種付けされてる……うう、気持ちいいっ」 ビクビクと体を震わせ、膣内射精の甘露を味わうエミリ。 二人の少女はたっぷりと健太の精液を受け止め、女の幸せを噛み締めた。その嬉しそうな顔には、妊娠の恐怖など微塵もない。むしろ受精するなら本望なのだろう。 「ふう、二人ともよかったぞ。思いっきりしぼり取られた……」 健太は疲労を感じてへたり込んだ。そこに美貌の肥満児、ノリ子が寄ってくる。 「後始末は私に任せて。口で綺麗にしてあげる」 「ああ、麗華、頼む……」 「だから、私はノリ子だってば」 ぶつぶつ文句を言いながら、ノリ子は細い唇から舌を出して健太のペニスをなめ始めた。その顔のおかげで、「彼女」が淫らな奉仕をしてくれているような気分になる。 健太はノリ子の向こうに視線をやった。そこには「彼女」の肢体だけを持つヨシ子がいる。反対側には、「彼女」の知能を持つエミリと、「彼女」の名を持つサダ子がいた。 (麗華……) 健太は心の中で「彼女」の名を呼び、かつての恋人に思いを馳せた。人の形をした悪魔によって全てを奪われる前の「彼女」の姿が脳裏に浮かんだ。 あの日、カトーという名のあの魔術師によって、完璧な「彼女」は消されてしまった。 知恵、顔、体、名前……大事なものを一つずつ剥ぎ取られてしまった「彼女」は、最後には健太への愛情すら無くしてしまった。再び健太の恋人となることはないだろう。 その代わり、「彼女」の顔や名前を盗んだ四人の娘が健太の愛人となった。 四人の長所を合わせれば、かつての完璧な「彼女」とほぼ同等である。ある意味、「彼女」は今も健太のそばにいると言えるかもしれない。 全てのマジックが終わったあと、カトーは健太にこう言った。 「いかがです? あなたの願いは叶えましたよ。何でもできる完璧な麗華さんから、皆が羨む要素を全て取り去りました。これで、健太さんは彼女と対等どころか、どんな分野で競っても、絶対に勝てると思います。スポーツでも、勉学でも、そして容姿や人望も。『相手のことを好き』という気持ちでさえ、今の麗華さんはあなたに敵わないでしょうね。何しろ恋心を残らず無くしたわけですから、勝負にもなりませんよ」 「ち、違うんだ。俺はこんなこと望んでない。麗華を元に戻してくれ……」 「それは難しいですね。『僕の仕事がお気に召さない場合、料金は結構です』とは言いましたが、元通りにするとはひとことも言っていません。それに、他の皆さんがこんなにも喜んでいらっしゃるわけですし、今さら元には戻せませんよ。ほら、ご覧なさい。四人ともあなたにぞっこん惚れてらっしゃいますよ」 あの日から、健太はカトーの姿を一度たりとも見ていない。 もう顔を合わせることは二度とないだろう。そんな確信があった。 「どう? 健太、私の口、気持ちいい?」 「健太、私、もう一回してほしいな。こっちに来てよ」 「おい、健太、あたしのことも忘れるなよ」 「健太さん……あたしも、もう一度してほしいです……」 静かに回想にふける健太を、四人の少女が取り囲んでいた。 バラバラになった「彼女」が姿かたちを変えて、今も自分に寄り添ってくれている。そう思うと、自分がいま嬉しいのか、悲しいのかもわからなくなる。 健太はベッドに倒れ込み、小声で「彼女」の名前を呼んだ。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/174.html
『あっついなー、早く終わらないかなぁー』 夏も近づく梅雨明け間近の教室、苦手な数学の授業中に、沙耶香は机にラクガキをしなが らひたすら時間が過ぎるのを待っていた。 ボワ~ン!!と、突然いかにもな音と閃光、それに白い煙までつけてそいつは出現した。 「おわぁっ?」 「キャーッ!」 「な、何だぁ?」 皆逃げ腰で立ち上がり、騒然とする教室の中を見回すと、そいつは優雅に首を振ると、こ れまた優雅に手を一振りした。瞬時に皆の声も騒音も消え、活人画のごとく動きが縫いと められると、それはようやく口を開いた。 「やれやれ、ずいぶん賑やかな所へ出てしまったものだ。」 その口から綺麗な日本語が発せられる事が強烈な違和感をかもし出す。なにしろ異様な風 体と言ってよかった。二メートルは有るかと思われる見上げるほどの長身の男。均整の取 れた体つきに端正な、しかし絶対に日本人にはあり得ない堀の深い風貌。綺麗に整えられ た輝く漆黒の髪と髭がいっそ不似合いに感じるほどだ。その美丈夫が、黒を基調としたと ても古いスタイルのように感じられる見たことも無い服装に身を包んで、静かに立ってい た。 「さて、、」 明らかに只者でないと判る者が獲物を探すかのごとくあたりを見回すのは恐ろしい。 『い、一体なんなのよー?』 ビクつきながら見つかりませんよーにと首をすくめていた沙耶香だったが、程なく謎の男 の目が自分をとらえ微笑するのを見た。 「私を呼んだのは君かね?」 「わ、私っ?」 「そうだ、その魔方陣で私を呼んだのだろう?」 「ま、魔方陣?」 思いもかけぬ問いに愕然として見下ろすと、確かに机の上には何やらそれらしき円形の模 様をラクガキしていたのだが。だけどこれは? 「メールで出回っていた、これっ?」 「まあ多少不完全ではあったがね、何しろ久しぶりの事だ。興味を覚えて来てみたのだ よ。」 『ど、どうなってるのよ、魔方陣で呼び出すって…』 「あ、あんた、、誰?」 混乱しそうになりながらそれだけ言うのが精一杯だった。その反応が面白いのか、僅かに 男の微笑が強くなったように感じた。 「私か?私はそうだな、人間たちが神とか悪魔とか言うものに近いかな。」 「か、神様と悪魔じゃ、全然違うじゃない?」 「どうも人間の認識は不完全な様でね。それはともかく、なにしろ久しぶりの召還である し、贈り物として、ひとつ祝福はどうかね?」 「祝福?」 「そうだな、何か一つ君の願いを叶えてあげよう。」 「ホント?」 「ああ、といってもこの世界を壊すわけにはいかないので、あまり世界に大きな影響を与 えないものに限るがな。」 「願いねぇ…」 『多分お金持ちとかは OK なのよね。でもウチはそう不自由してるってわけじゃないしぃ。 せっかくだから、やっぱり…』 ちょっと考えてから沙耶香は思い切って一つ頼み込んでみることにした。 「胸おっきくして。」 「胸?」 日ごろの鬱憤が溜まっていたのか、怪訝な顔で覗き込んでくる男に沙耶香はまくし立てた。 「だって、ホラこんなにおっぱい小さいんだもん。いっつも貧乳って馬鹿にされてるみた いで。」 「脂肪の塊が欲しいのか?」 意外だという感じの呟きに、沙耶香はまた馬鹿にされたような気がして、叫ぶような調子 で返した。 「そ、その脂肪の塊が重要なんじゃない。」 男が僅かに首を振ったような気がしたが、どうやら本気だと分かってもらえたようだ。 「ふーむ。ではこの部屋に居る者のうち、最も乳とその下の胴回りの差が大きな者と体形 を入れ替える。それでどうだ?」 『乳の下の胴回りって、アンダーバストの事だよね。って事はぁ、優子だw。』 「ひっ!」 誰かの声がした。見回すと優子が蒼白になってこちらを睨みつけているのに気がついた。 男との会話は皆聞こえていたらしい。 『優子の体凄いもんね。ウエストは細いし手足も長いし、なにしろ F カップのプリプリ おっぱい。私と体つきを取り替えたら大損だもんねw 』 優子の表情を見ていたら、もうそれしか無いという気分になってきた。ごくりと唾を飲み 込み、吐き出すように答えた。 「いいわっ、それでお願いっ。」 「ふむ。」 また僅かに微笑むと、男は優雅に手を振った。と、同時に沙耶香は全身が泡立つような感 覚に包まれた。歓喜とともに体が作り変えられていく予感を覚える。見下ろすと、既にブ ラウスの下で胸がふくよかになり始めているのが分かる。 「うふふ」 早速両手を胸に当て、柔らかさを増した乳房の感覚を確かめる。大きい、確かに1サイズ は大きくなっている。AAカップのブラからはみ出した柔らかな膨らみがこんもりと盛り上 がっていくのが嬉しい。 しかし、沙耶香の喜びはそこまでだった。このままでは胸が苦しくなってしまうと、ブラ をはずためにブラウスを脱ごうとした時に気がついた。 『な、何コレ?』 スカートから引き出そうとしたブラウスが、どこもかしこもキツくなっている。腹には明 らかに余分な肉がつき、腕を動かすたびにブラウスがひきつれるようだ。プヨプヨとした 肉が波打つように震え刻々と隙間を埋め尽くしていく。 『ど、どうして?』 混乱する沙耶香に、意外な方向から聞こえてきたあえぐような声が、恐ろしい事実を伝え た。 「は、はぁ、あ、ああっ?」 予想もしない所から聞こえてきた声に驚き振り返ると、そこには激しく息をしながら身悶 えする麗華がいた。 『そんな!ウソ、麗華なの?でも、でもっ!』 確かにこのクラスで胸が大きいといえばもう一人、麗華もそうだった。だけど、麗華ははっ きり言ってデブ、なのだ。胸こそ一メートル越えとも言われるが、それだけでは無くどこ もかしこも太い。むっちりというよりブヨブヨとした手足、どっしりとした腹に尻、背中 でさえ皺が出来そうなほどあふれ出す脂肪。丸々とした顔に埋もれそうな目鼻。体重はど のくらいだろうか?歴史の教科書に出てくるふくよかな土偶のような体形なのだ。いっそ のことそんな可憐な名前じゃなければ良かったのにと、しばしば冗談の種になるほどだっ た。 その土偶が、目の前で身じろぎするたびに、はっきり分かるほど萎んでいく。ついにそれ を支えるだけの尻が無くなって、麗華のスカートがハラリとずり落ちると、随分すっきり としてきた白い太ももが露になり、ブラウスの下からブカブカになったパンツが覗く。信 じられない事実に驚き、震えながら見下ろす沙耶香の眼に恐ろしい光景が飛び込んできた。 既に丸々と膨らんでハムのようになった体。ブラウスのボタンは両側から引っ張られて引 きちぎられそうだ。 「そんな!いゃぁっ!」 そこからは、もうあっという間だった。一気に全身が残りの脂肪を受け入れて膨らみ、ブ チブチと何かが切れるような音がしてブラもブラウスもスカートともはじけて行く。急激 な体重増加に耐えかねて床に崩れ落ちるように尻餅をつくと、ブヨブヨとした体が波打つ ように揺れた。全てのボタンが外れ大きく前の開いたブラウスからは確かに大きいがだら りと下がったデブパイと立派な腹が、巨大化した尻でキツキツになったスカートからは丸 太のような足が覗いていた。 そして、沙耶香目の前では麗華が嬉しくてたまらないといった感じで全身を撫で回してい た。既にパンツまでずり落ちてしまい、下の茂みが丸見えになってしまっているのだが、 そんな事を気にする風は微塵も無い。撫で回す手が体の線を露にし、ブカブカになったブ ラウスの上からでも体形が全く変わってしまっていることが分かる。それに、あの脂肪の 下から現れた意外なほどの美少女顔。ニキビが多くベトついた感のあった肌までが、別人 のようにすっきりと変貌していた。 『そんな、こんな事って、』 呆然とする沙耶香だったが、元凶の男は涼しい顔で微笑みかけてきた。 「どうかね?」 「ち、違うっ!こんなの要らないわっ!」 肉に埋もれそうな顔の中から必死に搾り出した当然の抗議にも、男は笑みを消し意外だと いう表情を見せた。 「ふーむ?脂肪が重要なのではなかったのかね?」 「そうじゃなくて、、とにかく違うわっ!」 「ふむ?違うのか?」 そう言う男がまた優雅に手を振りあの泡立つ感覚がもどってくると、沙耶香は安堵の吐息 をもらしたが、すぐに何かがおかしいと気がついた。泡立つ感覚は胸だけに集中している のだ!まさかと思って見上げると、麗華の胸だけが見る間に膨らんで行くところだった。 『!!!』 もちろん沙耶香の胸はどんどん萎んでいく、それも中身だけが抜けるようにしおれて、、 「やめてやめて、やめてぇ~っ!いやぁああっ!」 件の男は、恐慌をきたしわめき散らすように叫ぶ沙耶香を見やると、頭を僅かに振ったよ うに見えた。 「やれやれ、これほど長く存在してみても、人間といったものは良く解らぬものだ。どう も上手くいかぬようだから、これで私は失礼するよ。」 言うが早いか、沙耶香が止める間もなく男はボワ~ンと擬音めいた破裂音を残して何処か へと消え去った。跡に残されたのは、床にへたりこんで泣き叫ぶ沙耶香と、再び丸々と膨 らんだ胸を抑えスカートを引きずりあげる事も忘れて立ち尽くす麗華、呆然として彼女ら を見比べる人々だけだった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/55.html
投稿日:2009/06/08 不審そうな目の啓一を何とか誤魔化しつつ、恵は家に帰ってきた。 「ただいまー。あれ、母さんいないのか?」 先にリビングに入った啓一は、母親が残した書置きを見つけ出していた。 「なんだ、婆ちゃん家に行ってるのか。こりゃ今日は帰ってきそうにないな。 父さんもまた出張だし……うちの親にも困ったもんだ。まったく」 「ってことは、今日は二人だけ?」 内心の期待を抑えるように恵が言う。 「ああ。勝手に飯食って風呂入って寝とけって。金だけは置いてくれてるからいいけど、 最近の母さん、ホント手抜きになったよなあ……。あーあ、今から買い物行かないと……」 「そう。じゃああたし、とりあえず着替えてくるね」 その場に鞄を置き、パタパタと自分の部屋に向かう恵。そんな彼女に啓一が声をかけた。 「? 何言ってるんだ? 着替えなんてここでしろよ。かかってるだろ、そこに」 「――はあ !?」 当然の顔で言ってくる啓一に、恵は目を見開き大声をあげてしまう。 啓一の指した方を見ると、フリルのついた白いブラウスとシャツ、水色のミニスカートが ハンガーにかけられてそばの壁にかかっていた。恵の普段着に違いない。 「ん、何じろじろ見てるんだ? 早く着替えて出かけるぞ」 ためらいもなく制服の上下を脱ぎ捨て、下着姿になった啓一が急かす。 「え、えーと……あたしも、その、ここで……?」 「何当たり前のこと言ってんだ。いつものことだろ?」 男と裸になるのは慣れているが、着替えを一緒にとなると別の羞恥心がわいてくる。 恵は真っ赤な顔で首をぶんぶんと振った。 「あ、あたし……部屋で着替えてくる……」 「あれ、なんか今日の恵はおかしいな。お前、本当に恵――」 「そ、そうだね。いつも啓一と一緒に着替えてるもんね。兄妹だから何でもないよね。 でも、できるだけこっちを見ないでくれると……う、嬉しいかな……うう……」 観念したようにセーラー服に手をかけ、恵は兄の前で涙ながらに脱ぎ始めた。 それからも恵の一日は大変だった。 「どうしてこんな切り方になるんだよ。包丁なんていつも使ってるだろ?」 「恵は味付け、いつも通り醤油とマヨネーズだよな。たっぷりかけといたぞ」 「どうした恵。早くその問題仕上げないと、宿題終わらないじゃないか」 ようやく夕食も宿題も終わり、彼女が風呂に入ったのはかなり遅い時間だった。 いつもならすぐに片付くのにと不思議がる啓一を、体調が悪いと必死に誤魔化し ようやく恵の義務から解放された彼女は、疲れた顔で湯船につかっていた。 「――はあ……あの子って、普段どんな生活してるのよ……?」 顎まで湯につけて愚痴を漏らす。彼女の生活は想像以上に風変わりなものだった。 何をするにも双子の兄、啓一と一緒なのだ。 普通高校生にもなったら家族とはもっと距離を置くものではないのか。 そう思った恵だったが、ふと唐突にある考えに思い至った。 (なんか兄妹って言うより、何年も連れ添った夫婦みたい……) つややかな髪を遠慮することなく湯の中に広げ、口までつかって泡を吐く。 揺れる黒髪を見ていると、自分があの優等生の体になったことを確かに実感させられる。 「……なんか期待してたのと違うな、こんなの……」 自分が望んだのは周囲の羨望の眼差しと、姫に仕える騎士のように従順な兄。 そして彼女の私生活を探り、皆に隠れて遊んでいたり他人を馬鹿にしていたり、 そんな人間味のある水野恵の姿を見つけられればいいと思っていた。 ――ほら見てみなさい。優等生っていっても、あたしと変わらないじゃない。 そう思うことができれば、入れ替わった甲斐もあるというものだった。 だが今のところ、そうした目論見は全て外れ、啓一にペースを狂わされ続けている。 そもそも恵と啓一がただの双子の兄妹なのか、密かに恋人同士なのかもまだわかっていない。 「……いけないいけない。弱気になっちゃ駄目よあたし」 濡れて重くなった髪を振り、恵が下腹に力を込めた。 「まずは啓一君を油断させて、色々聞き出さないと――」 そう彼女が硬く決心したところで、にわかに声が聞こえてきた。 「恵、洗い終わったか? じゃあ俺も入るかな」 「――えぇっ !?」 風呂場のドアが開き、全裸になった双子の兄が姿を見せた。 手に持ったタオルで体を隠そうともせず、素裸の啓一が浴室に入ってきた。 (……こ、この二人、恥じらいとかプライバシーとかないのかしら……?) 呆然とする彼女に目もくれず、啓一は椅子に座って頭を洗い始めた。 サッカー部で鍛えたしなやかな筋肉が否応もなく恵の目に飛び込んでくる。 彼女は何も言うことができず、湯船の中でじっと兄を見守っていた。 「――ふう」 泡だらけの頭に湯をかけて、犬や猫のように首を振る啓一。 そして今度はスポンジにボディソープをつけ、体を擦りだした。 「…………」 「――恵」 「な、何 !?」 突然声をかけられ、思わず身構えてしまう恵。 「悪いけど背中流してくれ」 「ああ、せ、背中ね……うん、い、いいわよ」 ザバァという音をさせて立ち上がり、彼女が啓一の後ろにやってくる。 スポンジを手に、全裸の妹が裸の兄の背中を擦っていく。 「…………」 両者共に一言も発しない浴室の中、恵は気まずい雰囲気で彼の背を眺めていた。 (うう……な、なんでこんなにドキドキするんだろ……) 双子の兄妹が互いに一糸まとわぬ姿で、ごく近い距離で座っている。 その事実に心臓の鼓動が早くなり、体が火照っていくのを恵は感じていた。 「ありがと恵、もういいよ」 「あ、そ、そう……?」 解放されたような、だが残念な感情が胸をよぎる。 高まる興奮を何とか隠そうと、彼女は自分の体に濡れたタオルを巻いた。 そんなことで大事な部分を覆い隠せるはずもないが、ついそうしてしまっていた。 やはりまた二人は黙りこくって、湯を流す音だけが数回、浴室に虚しく響く。 すっかり体を洗い流した啓一は、立ち上がると妹の手をとって笑いかけた。 「じゃ、一緒に入ろうか」 「――はい……?」 恵はぎこちない動作で湯船を振り返った。決して広いとは言えない、いやむしろ狭い湯船の中に 高校生の男女が共に浸かるのはなかなかの難題で、ぴったり密着しなくてはならないだろう。 「ほら、入った入った」 「え、あ……ちょ、ちょっと、啓一……!」 ぼうっとした少女の腕を引き、彼は狭い浴槽の中に恵を引きずり込んでしまった。 風呂の中であぐらをかいた啓一の上に座るような格好で、彼女が湯に浸かる。 二人分の体積が加わって今にも溢れそうな湯船で啓一に抱きしめられながら、 恵は居心地の悪そうな顔でじっと虚空を見上げていた。 「いつも通り百まで数えようか。ほら、いーち」 一緒に数を数えよう。そう言いたげに啓一が自分を見つめている。 (な、なんであたしがこんなこと……) いっそ、自分は恵ではないとこの男にバラしてしまおうか。 その思いも頭をよぎったが、いざ実行するのはためらわれた。 広くもない浴槽の中で抱きかかえられた今の状況は啓一に分がありすぎる。 大事な妹の体を奪ったと聞けば、啓一が怒って彼女に暴力を振るう可能性も考えられた。 ここは何とか恵を演じて、安全かつ穏便にこの場から脱出しないといけない。 「にーい、さーん、よーん……」 (うう……なんか熱くなってきた……) 自分がだんだんのぼせていくのを感じながら、恵は大人しく啓一と共に数を数え続けた。 やっと風呂から上がったとき、恵はすっかり血が頭に上って意識が朦朧としていた。 「うう~……あ、あたしもう駄目……」 「なんだ、あれくらいでのぼせたのか? おかしなやつだな」 トランクスを一枚だけを身に着けた啓一が、同じく下着姿で寝転がる彼女を見下ろしている。 その毒気のない表情に恵は文句の一つも言いたかったが、今は喋るのも大きな負担だった。 「ちょっと待ってろ。冷たいもの取ってきてやるから」 「うん、お願い啓一ぃ……」 優しい言葉を残してその場を離れる啓一に、恵は死にそうな声で答えた。 自分の理解を超えたところは多いものの、兄は妹である自分に良くしてくれるし、 互いに裸でくっつき合っても決して手を出してこなかった。 やはり二人が恋人同士というのはただの無責任な噂に過ぎなかったようだ。 子供のような無邪気な振る舞いを未だに続けている、奥手な高校生の兄妹。 今日一日の生活から恵はそう結論づけ、明日から学校でどうしようかと考え始めていた。 そのため啓一が戻ってきたときも恵はすっかり油断しきっていて、 いつの間にか自分が後ろ手に縛り上げられていたことにもすぐには気づかなかった。 「――え、あれ……?」 数秒してからようやく、自分が拘束されたことを認識する。 「あたし、これ……あれ、啓一……?」 「お疲れ様、加藤さん」 ビニール紐で妹の足首も縛った啓一が、笑顔でそう口にした。 「え、何言ってるの? あたしは恵よ、啓一? 何これ……ほどいてよ」 「なかなか面白かったけど、まあこの辺にしとこうか。そっちも疲れるだろうし」 「え……な、何の話……?」 そこへ、セーラー服をまとった少女が姿を現した。 茶色い髪を短く切った癖っ毛の女子で、真剣な眼差しで恵を見据えている。 恵と入れ替わった少女、加藤真理奈だった。 「あ、あんた――バラしたのね! バラすなって言ったのに!」 怒りの表情で自分を怒鳴りつける恵に、真理奈は落ち着いた声で言った。 「残念だけどそれは無理なの、加藤さん」 「……な、何がよ」 その横から啓一が続ける。 「俺と恵は心が通じ合っている。お互いの身に何かあればすぐにわかってしまうんだ。 こっそり入れ替わって俺を取り込もうとしても、はじめから無駄だったんだよ」 「そ、そんな……いくら双子でも、そんなことできるわけ――」 身動きの取れない恵がうめいた。憤怒と絶望に顔を歪ませ、彼女は真理奈をにらみつけていた。 「それができちゃうから困ったもんでね。俺たちは顔を合わせなくても会話ができるし、 離れた場所にいても位置がわかる。恵の見たものは俺もわかるし、俺の聞いたことは恵にも届く。 信じられないだろうけど、これが君の知りたがってた俺たちの秘密なんだ」 「――それじゃあ、最初からわかってたの…… !? 全部知ってたくせに、 今日一日ずっとあたしをからかって遊んでたって訳ね……! くそ、ほどけぇっ!」 少女は足掻いたが、それしきで彼女の戒めは解けない。 「そんなこと言ったって、先にそっちが恵の体を取ったのが悪いんじゃないか。 大人しく返してほしいところだけど、今の加藤さんの様子じゃ難しい……かな?」 その言葉にパッと表情を明るくして、黒髪の少女は顔をあげた。 「そ、そうよ――あたしの体はこの子のなんだからね! 変なことさせないわ! あたしが返す気にならなきゃ、あたしがずっと水野恵――ちょっと、何すんのよ !?」 叫ぶ恵を抱きかかえ、啓一は妹の顔を真理奈の方に向けた。 茶髪の少女は彼女に似つかわしくない落ち着いた表情で恵に近寄り、そっと唇を重ねた。 まったくタイプの異なる美少女同士の口づけを、啓一は無言で見つめている。 「んっ――な、何よ !?」 顔を離され、喋れるようになった妹の乳房に彼が手を伸ばした。 巧みな手つきで柔らかな肉を揉まれ、優しく乳首をつねられて、恵は甘い声をあげた。 「あぁっ……や、やめて……!」 「俺たちのことが知りたかったんだろ? 教えてあげるよ。 水野兄妹は二人きりになると、いつもこうして仲良くセックスしてます、ってね」 「ち、違う……あたし、こうしたかった訳じゃ……」 首を振っていやいやをしてみせるも、啓一と真理奈の愛撫は絶え間なく恵を責めたてる。 体の隅々まで知り尽くした二人のテクニックに、彼女は容赦なく喘がされた。 「あぁっ、ん……やだ、やだあ……」 「嫌がってる割に気持ちよさそうね、加藤さん?」 (いや、いやあ……あたし、こんなの……) こんなことを望んでいた訳ではなかった。突然の入れ替わりに驚き慌てる水野兄妹を手玉にとり、 この恵の体を人質に、二人を従わせるつもりだったのだ。 ひょっとしたら啓一をものにするかもとは思っていたが、それも彼女主導の話である。 このように自由を奪われ、恥辱にまみれて二人の玩具にされたかった訳ではない。 啓一が妹のショーツをずらし、淫らな手つきで陰部に指を這わせる。 「大丈夫だよ、しっかり濡れてきてるから」 「――何が大丈夫なのよぉっ !?」 叫ぶ恵を無視して、啓一は彼女の女陰を、真理奈は胸と唇を丹念に刺激し続けた。 学年でも一、二を争う人気の男女三人の絡みは、級友なら誰もが興奮せずにはいられない光景だろう。 真理奈の舌が恵の口内を舐め回し、啓一の指が妹の膣内を前後する。 手足を縛られた彼女はそれに抵抗もできず、ただ泣きながら慈悲を乞うだけの存在だった。 「ん、はぁっ……あ、あぁぁっ……んむ、や、やめへぇっ……」 今の恵は攻めるのは得意でも、攻められるのは大の苦手だ。 生来の気の強さがそうさせたのだが、この状況ではそれが裏目に出てしまっていた。 (い、いやよ……あたしが、こんなやつらに……!) 「落ち着いて、快感に身を任せるの」 「あぁっ…… !?」 真理奈に首筋を舐められ、悶えて身をよじる恵。 下の方では啓一が性器上部の小さな突起をつまみ上げ、舌でつつき回している。 「や……やめ、そこはっ…… !! ああぁあぁっ !!!」 最も敏感な器官をざらざらした粘膜で擦られる感触に、彼女は軽く達して悲鳴をあげた。 自由にならない脚の付け根からとろりとした汁が一筋垂れ、床にこぼれた。 「気持ちいいでしょ。いつもの私より感じてるんじゃないかな?」 「いや、はぁんっ、言う……なぁっ……」 唇の端からよだれを垂らして恵が喘ぐ。彼女とて何人もの男を手玉にとった 経験豊かな女だったが、その彼女がこの二人にはまったく歯が立たなかった。 (こ、こいつら……う、上手い……) 恵と啓一がいつから性交を始めたかはわからないが、この体の感じようといい 二人の手つきや舌づかいといい、普段から当たり前に肌を重ねているようだった。 体の弱点を的確に責められ、彼女は息も絶え絶えに啓一と真理奈を見上げている。 十数年間慣れ親しんだ自分の体を前に、恵の苦悶の声が漏れた。 「あ、あたしは……あんたじゃ、ないっ……!」 「そうね。でも今のあなたは啓一の妹、お兄ちゃんのことが大好きな水野恵でしょ? ちゃんといつも通り愛してあげるから、ほら、私たちを受け入れて……」 「やだ、やだやだやだやだぁっっ……こんなのやだぁっ……!」 精一杯の力で暴れようとするが、それは無駄な抵抗でしかなかった。 そこでやっと足首の紐がほどかれ、恵の下半身が自由になった――と思ったのも束の間、 真理奈が仰向けになった彼女の胴体の上に座るような形でのしかかってきて、 彼女の細い脚をつかんで無理やり大股に開かせた。 「――やだぁっ! やめなさいよぉっ !!」 その言葉とは裏腹に、二人に愛撫され尽くした恵の性器はひくひく蠢き、硬い陰核を勃起させている。 啓一は興奮しきった妹に狙いを定め、正面の低い位置からたくましい肉棒を一気に突き入れた。 「はぁんっ !?」 待ち望んだ快感に恵の膣がうねり、啓一の陰茎を包み込んだ。 そのあまりの激しさに、一瞬彼女の意識が飛んでしまったほどだ。 「や、やめて、入れちゃ……駄目ぇ……」 「どう? 加藤さん。俺と恵の体、相性いいだろ?」 「そぉっ、そんな……わけぇっ……あひぃっ !?」 返事もろくにできずに恵の体が跳ね回る。 啓一の言う通りこの体は兄との性交に歓喜し、彼女の脳を至上の快感で苛み続けていた。 まるで彼のためにあつらえたかのような肉壷がじゅるじゅると音をたてて啓一の陰茎をねぶり、 かき回される浅い性感帯に口からは情愛に満ちた嬌声があがる。 結合部からはいっそう多量の汁が湧き出し、灼熱のスープとなって隙間からこぼれていった。 「あぁっ……んぁあぁ、はひぃぃぃ……!」 「いいなぁ加藤さん……。ねえ啓一、後で私にもしてよー」 「いいけど元に戻ってからな。それまでお預けだ」 「ぶぅ……啓一のイジワルー」 「ひぃぃ……はぁぁんっ! ああぁぁあぁ…… !!」 今の恵には、二人の会話もろくに耳に入ってこない。 後ろ手に縛られ、仰向けのまま両脚を開かされる屈辱の姿勢で犯されているというのに この体は双子の兄との交わりに激しくよがり狂い、 彼女の意思とは無関係に性器の肉が愛しい陰茎をしごきあげてしまう。 (だめぇっ……でも……いい、いいよぉ……!) そこにいるのは真面目で清楚な優等生の水野恵ではなく、 嬉しそうに腰を振って兄との近親相姦にふける淫らな一人の少女だった。 高ぶる恵に応えるように啓一も突きこみを激しくしていき、 緩急をきわめた絶妙の動きで妹の中をこねくり回す。 あまりの快感に耐えかねて、とうとう少女は白旗を揚げた。 「い……いい、いいのぉ……も、もっとぉ……! あああぁっ…… !!」 「あらあら、本音が出ちゃったわね。ほら、素直になった方が楽でしょ?」 再び真理奈の手が恵の頬に伸ばされ、桃色の唇を音をたてて吸い上げる。 「――んんんっ !? んぐ、んむぅぅっ !!」 上を真理奈に、下を啓一に責められ、既に恵の理性は消え去ってしまっていた。 もはや自分が誰かもわからず、彼女は欲望のままに二人と交わり続けた。 焦点の合わぬ黒い瞳が虚空を見上げ、とろんとした顔から甘い声が漏れる。 だらしなく開いた口からはよだれが垂れていたが、それも真理奈に舐められ 口内に残った分も含めて彼女に吸引されてしまう。 「――ずずずず、じゅるうぅっ……」 「んんっ……んんんっ、むぅぅ…… !!」 蜜を味わう蝶のように恵の唾液を吸い取った真理奈が、淫猥な笑みを浮かべてそれを嚥下した。 人のぬくもりで程よく温まった至高の美食を最後の一滴まで堪能しようと、 茶髪の少女が自分の唇をぺろりと舐めあげる。 それは普段の真理奈よりももっと妖艶で魅惑的な表情だったが、 恵は視覚も聴覚も肉欲の海に飲み込まれており、それを認識することはできなかった。 啓一は妹の腿をつかみ、自分の腰を彼女に何度も何度も打ちつけた。 そのたびに恵の唇からは狂おしい嬌声が、陰唇からは熱い愛液が絶え間なく漏れ続けた。 「あぁぁ……いい……な、中までぇっ……!」 劣情の虜となった少女は理性も矜持も捨てて、発情した雌犬に成り下がっている。 そんな恵の痴態を楽しそうに観察しながら、啓一と真理奈は彼女を責めたてた。 造作の異なる男女の顔が同じ微笑みを浮かべ、息の合った連携で恵を犯していく。 「はんっ……それ、も、もっと……かき混ぜ、いいぃっ……!」 「やれやれ、すっかり恵になりきっちゃって。困ったもんだよ」 「私はこんなにエッチじゃないわよ。加藤さんがやらしいのよ……」 「いやいや、いい勝負だと思うぞ。なあ加藤さん?」 軽口を叩いて啓一が腰を突き上げる。 「――あ゛あ゛ぁぁぁっ !?」 深いところまで刺し貫かれ、恵が喉の奥から悲鳴をあげた。 「んー、いい声ね。たまにはこうやって自分の声を横から聞くのも悪くないかも」 「何言ってるんだ。入れ替わったときなんて半泣きになってたくせに」 「だって仕方ないでしょ !? ホントにびっくりしたんだから……」 そんな会話を交わしつつ二人は容赦なく恵を犯し、少女の心から理性を奪っていく。 恵は沸騰した頭でまともな思考ができず、ただ本能のままに腰を振り続けた。 (き、気持ち、いい……啓一君……マジ、サイコー……!) 啓一に抱かれ性器を合わせていると、まるで本当に彼の妹になったような気がしてくる。 自分が加藤真理奈ではなく、はじめから水野恵だったという錯覚に襲われる。 ぼやけた視界に愛しい兄の輪郭を捉えたまま、恵は恥じらいの欠片もなく 荒い喘ぎと女の汁の限りを尽くして兄との禁断の交わりに狂喜した。 それから何度も絶頂にのぼりつめ、恵は見るも無残な有様になっていた。 白い裸体は汗と飛び散った体液にまみれ、汚らしい姿を晒している。 目は虚ろで何も瞳に映っておらず、顔の下半分には唾液が塗られ、てらてらと光り輝く。 両手を後ろで拘束された姿勢のため、華奢な体にしては豊かな乳房が上に突き出され 啓一と真理奈、二人の舌と唇の餌食になってほのかな紅色に染まって濡れていた。 長いストレートの黒髪は汗を吸って湿り、一部が首筋や腹にべっとり張りついている。 もし学校の級友たちが見れば昇天してしまいそうな、水野恵のあられもない痴態がそこにあった。 「はあぁ……はひ、んあぁぁ……っ」 「――ふう、さすがに俺も疲れてきたな……」 「そろそろいいんじゃない? 加藤さん、もう完全に飛んじゃってるよ」 たしかに、うめき声をあげることさえ今の恵には辛そうだった。 啓一はこれで終わりにしようと最後の突きこみをはじめ、動かない妹の中を再度往復した。 汁に溢れる膣内を上下し、最奥めがけて恵の肉壷を存分にえぐりこむ。 「あぁぁ……はあぁあぁぁ……っ」 「――くうぅぅっ !!」 奥の奥まで達したところで、ほとばしる男の欲望を解放する。 濃厚な子種を一杯に注ぎ込まれた恵の肉がうねり、子宮が喜びに収縮した。 「……はあ、はあ、もう限界だ。ちょっとヤリすぎたかも」 「うう……私、まだしてもらってないのに……啓一ひどい……」 ようやく萎えた肉棒をずぶりと引き抜き、啓一は深く息をつく。 彼の妹は白目を剥いて身を痙攣させ、ぐったりして床に横たわっていた。 「もういいだろ。薬、飲ませてやれよ」 「はいはい。あー、やっと元に戻れる……」 「しかし、こんなのどこで手に入れたんだか……?」 真理奈はセーラー服のポケットから小粒の錠剤を一つ取り出し、自分の口に含んだ。 それをゆっくり舌で転がし充分に湿らせると、倒れた恵に口移しで飲ませてやる。 柔らかな微笑みを浮かべ、茶髪の少女はもう一粒の薬を取り出して飲み込んだ。 彼女の部屋に隠されたこれを探すのは大変だったが、何とか真理奈は錠剤の瓶を見つけ出していた。 こうして、水野兄妹と真理奈の長い一日が終わる。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 開けた窓から暖かな風が吹きつけてくる。 今日は久しぶりに太陽が明るい顔を見せ、校庭を白い光で照らしていた。 恵は箸を動かし、自作のコロッケを食べやすいよう半分に切り分けた。 パンをかじりながら楽しそうに話す友達の声が聞こえてくる。 「中川のやついつも澄ましてるけど、実はああいうのがむっつりだったりするのよねー」 「おいおい、祐介はそんなやつじゃないぞ」 「そう? 意外と瑞希にぞっこんみたいだけど」 隣の女子の発言に軽く笑い、恵が天使の微笑みを見せる。 明るくて清らかで、そして真っ直ぐな笑顔だった。 そんな彼女の姿を確認し、真理奈はまたも恵の席に近づいていった。 「水野さん、今いいかしら?」 「あ、加藤さん……何?」 恵と啓一と、その場にいた数人の生徒が一斉に真理奈を向いた。 「なんだ加藤。またお前、恵さんに用か?」 「ええそうよ。悪いけど、ちょっとこっちに来てもらっていい?」 「うん、いいよ」 彼女は弁当箱を机に置き、席を立って真理奈の後についていった。 すらりと伸びた彼女の手足はテニスで鍛えられたもので、しなやかな線を形作っている。 恵を人のいない廊下の端まで連れてきた真理奈は、彼女の方を振り返り仁王立ちで向かい合った。 「それで、あの……加藤さん、何の用?」 用心深く身構えて恵が問う。 先日の事件以来、こうやって二人が顔を合わせるのは初めてのことだった。 あれから真理奈は二、三日学校を欠席してしまい、今日の登校は数日ぶりとなる。 体調不良ということだが、精神的なショックが原因なのは啓一と恵には明白だった。 自分たちの秘密を知られたという事実と、こうして呼び出されて また何かされるのではないかという不安が、恵の心をかき乱していた。 「恵さん……今あたしの話、啓一君にも聞こえてるのよね?」 「う、うん……」 彼女は落ち着かない様子で両手を組んだ。 一対一で向かい合う黒髪の少女に、真理奈がニヤリと笑って告げる。 「――次は負けないわよ」 「え……?」 思いもしない真理奈の言葉に、彼女は呆けた顔でつぶやいた。 「この前のは負けを認めてあげるけど、この加藤真理奈が負けたままでいいはずがないわ! あんた達水野兄妹に次は勝たせてもらうからね! 覚悟しなさい!」 「え、えーと……? な、何の話してるの……?」 「いい? 次の土日は空けといてよ! また勝負するんだから!」 「し、勝負って何の……?」 「そんなの、ナニに決まってるじゃない!」 腰に手を当てて勝ち誇る仕草で真理奈は言い放った。 その瞳には生き生きした光が灯り、強い自信に満ちている。 「こないだのはあんたの体だから負けちゃったのよ! ヤリ慣れたあたしの体なら、あんた達をいくらでもヒィヒィ言わせてやれるわ!」 「――は、はあ……」 「という訳で、また土曜か日曜に勝負よ! わかったわね !?」 「いや……そ、そういうのはちょっと困る、かな……?」 恵の頬に一筋の汗が垂れる。先ほどとは別種の困惑が彼女の顔を覆っていた。 教室の中では、啓一が友人たちと昼食を続けている。 だが彼はいきなり箸を止め、片手で頭を抑えてうつむいてしまった。 「…………」 「あれ、どうした啓一? 腹でも痛いのか?」 「いや、何でもない……」 声をかけてくる友人にそう答えて、啓一は窓の外を見上げた。恵と同じ困惑が顔に満ちている。 「それにしても恵さん帰ってこないな。加藤のヤツ何してんだか」 「ま、まあ心配することないだろ……ははは……」 冷や汗を流して弁当をつつきながら、啓一は妹の帰りを待ち続けた。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/33.html
投稿日:2009/02/25(水) <9> 「なにこれ?」 「えぇ!?」 『品探しに出ます。しばらく休みます。』 店の前には達筆な筆で書かれた張り紙… 「さっきまでやってたじゃない。」 「まだいるんじゃないの?」 二人は各々に戸を叩いて中にいたはずの老婆を呼んだ。 しかし、中からの答えはなかった。 「はぁ…」 瑠美になったさやかがため息をつく。 「とりあえず帰ろっか。」 さやかの体の瑠美が言うと、さやかは小さく頷いた。 「これからどうする?」 瑠美の家に戻るとさやかが切り出した。 「そのうち戻るかもしれないんじゃない?」 体が変わっても瑠美の楽天家な性格は変わらない。 「そんな…明日までに戻らなかったら?仕事とか。」 「そっかぁ。」 「私、看護婦さんなんてできないよ。」 「大丈夫、私だってできるんだから。私だって、受付なんかできないよ。」 「とりあえず、調子が悪いとか言って座ってニコニコしてればなんとかなるから。」 そこまで言って、さやかが気づいた。 「明日の服…」 (え?) 瑠美は一瞬疑問に思ったが、 自分の眼下から伸びるスレンダーな脚を見て納得した。 「そっかぁ、こんな格好のさやか、見たことないもんね。」 「取りに行かないと…って、瑠美の知り合いにあったらどうしよう?」 「そうだね…。下向いて歩いたら。」 「そんなんでどうにかなるかなぁ。」 「とりあえず、この間だけはしょうがないよ。」 「じゃあ服取ってくるね。」 「いってらっしゃい。あ、これ私の傘。」 「ありがとう。」 今度は慎重にブーツを履いていく。 「今度は大丈夫。」 そう言って笑うさやかは、いつもの瑠美のように見える。 「気をつけてね。」 瑠美の口調もいつものさやかのようにおだやかなものだった。 532 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 56 02 ID 1xeCB708 <10> 駅まで10分、電車で1駅、さらに歩いて5分。 幸い瑠美の知り合いには会わずに、さやかは自分の家に着いた。 「とりあえず服を持っていかないと」 さやかはクローゼットから服を探す。 白のブラウス、ベージュのニット、黒のジーンズ。 そして黒や紺の落ち着いた色の下着。 いくつかを旅行用のカバンに詰めていく。 「ふぅ。」 さやかは一息つくと、床に座り込んだ。 胸に感じていた重みが少し和らぐ。 ミニスカートから覗くのは黒いストッキングに 包まれた肉感的なふくらはぎ。 (私の服…今度はいつ着るんだろう。) さやかの中にはまた不安がこみ上げてくる。 しばらくするとさやかは自然に服を脱ぎ始めていた。 「瑠美になっちゃったら着ることもないよね…」 部屋の寒さに気づきエアコンのスイッチを入れると ピンクのプルオーバーを脱ぎ、白のキャミソールを脱いでいく。 白黒チェックのミニスカート、黒のストッキングも脱いでしまう。 淡いブルー下着姿の瑠美。 鏡の前に立つさやか。 (それにしてもおっきいなぁ。やわらか~い。) 両手でバストをつかむと、後ろ向きになりヒップを持ち上げる。 (ヒップはちょっと大きすぎかな…) クローゼットからボタン脇にフリルが付き 細い黒のストライプが入ったブラウスに袖を通す。 二の腕に抵抗を感じるも何とか通すが、指先が袖から出ない。 左手で引っ張り手先を出す。 左の袖を通し前を留めようとするがなかなかボタンが留まらない。 (ひゃぁ、留まんないんだ…) 胸を引っ込め慎重に留める。 そして黒のロングスカートを穿く。 なかなかファスナーが閉まらない。 (よいしょっと) 鏡を見るとヒップのラインが露わになっている。 正面を向くとずいぶんアンバランスだ。 ぶかぶかの袖、はちきれそうな胸のボタン。 この前着たのは3日前くらいだろうか。 あのときの自分と全く違う体。 ふっと息をつくとパチンという乾いた音が響いた。 少し軽くなる胸の圧迫感。 さやかの細身な体型を強調するデザインだが、 瑠美が着ると、縦横のバランスが崩れてしまう。 2番目のボタンが飛んでしまい、横からは水色のブラジャーがのぞく。 「あ~あっ」 さやかはわずかに歩を進めるとかがんでボタンを拾った。 「そりゃこうなるよね」 苦笑いをしながら服を脱いでいく。 「これは置いていかなきゃ。瑠美も待ってるし早く行かないと。」 元の瑠美の服を着るとさやかはカバンを持って外へ出た。 533 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 56 42 ID 1xeCB708 <11> 「おかえり」 「ただいま」 「ちょっと遅かったね」 「うぅん…ちょっとね」 「誰か知り合いに合って困った?」 「うぅん、そんなことないよ」 (自分の服着てみたなんて言えないよね…) 「とりあえず、こんな感じ」 「ありがとう、ちょっと着てみるね。」 そういうと、瑠美は白と黒のツートンになった レトロ柄のワンピースを取り出した。 「こういうのって、背が高くないと似合わないじゃない」 「そういうもんかなぁ」 「ちょっと待ってて」 瑠美は先ほどさやかが着替えた隣の部屋へ入っていった。 「あれは確かにお気に入りだけど…」 しばらくすると、瑠美が出てきた。 「どう?っていつものさやかになっただけかぁ」 「そうだね。」 いつもの自分を鏡で見ているようで、さやかは言いようのない違和感を覚えていた。 しばらくお互いの体で過ごしたが、戻る気配は全くない。 いつ戻るか分からない以上、とりあえずはお互いの役割を果たすしかなかった。 二人はお互いの情報を交換した。 職場の場所から始まって仕事の流れ、職場の人間関係などなど… 「大丈夫かなぁ」 「大丈夫なわけないじゃない、でもなんとかなるでしょ」 「そんなぁ」 楽観的な瑠美にさやかは半分あきれていた。 自分が看護婦の仕事なんて… 「私の仕事はたぶん瑠美はできるけど…」 「大丈夫。ちょっと風邪気味とか言ってればどうにかなるって。」 そういった後、瑠美が続けた。 「家とかどうしたらいいだろう、あと財布とかも。」 二人で相談した結果、家も財布も自分の体の持ち物を使うことにした。 財布ならばまだしも銀行のカードが他人では何かあったとき大変だ。 とりあえず夕食までは瑠美の家で過ごした。 出前のピザを頼み、同じピザを分けて食べたり、瑠美の食べたところにさやかが口をつけたり、いろいろしてみたが戻る気配はやはりなかった。 「じゃぁ、行くね。」 夜も更けてきたため、瑠美はさやかの家へ帰ることにした。 さやかのブラウンのロングブーツを履いた瑠美は、 どこから見てもさやかそのものだった。 「うん、何かあったら電話してもいい?」 「休みは不規則だからいつ電話できるかわからないけど。 患者さんの具合とかで変わっちゃうから。」 「そうなんだぁ。」 「さやかのほうはできるの?」 「大丈夫、昼休みはちゃんとあるから。」 「そっかぁ、じゃあ待ってる。」 瑠美は軽くバイバイをしながら、玄関のドアを閉めた。 (自分の家なのにバイバイしてドア閉めるなんて。しかも自分に見送られて) そう思うと瑠美は少し苦笑いをした。 534 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 57 08 ID 1xeCB708 <12> 「ふぅ…」 瑠美が帰った瑠美の家でさやかは大きくため息をついた。 「こうなったらうじうじしてても始まらないかぁ。」 さやかは寝る前のいつものホットミルクでも飲もうと、 冷蔵庫を開けたが牛乳がない。 「そうだ、瑠美って牛乳嫌いなんだった。いいや、明日にしよ。」 あきらめてさやかは風呂に入ることにした。 再び襲う胸の重量感… 「やっぱり外すと来るなぁ…」 さやかは胸を支えながら浴室へ入った。 シャワーを浴び、体を洗っていく。 「それにしても柔らかいなぁ。おんなじ女とは思えない…」 つぶやきながらさやかはボディーソープを落とす。 くせっ気のある髪を洗い、浴室から出てくる。 「パジャマはどこかなぁ」 さやかはクローゼットを探す。 「これかぁ…」 パステルピンクで袖と襟に大き目のフリルがついたパジャマ。 「…しょうがないか。」 さやかはボタンを外してパジャマを着る。 「かわいいなぁ」 鏡を見て小さな体になった自分を改めて感じるさやかだった。 「病院までは15分くらい…7時には起きないと。」 さやかは部屋の電気を消した。 535 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 57 32 ID 1xeCB708 <13> 瑠美もさやかの家へ帰ってきた。 暖房を付けるとコートを脱ぎ鏡の前で腰に手を当ててポーズを取る。 レトロ柄のワンピースから伸びる脚は何度見ても美しい。 「お風呂入ろっかな」 瑠美は服を脱いで浴室へ入る。 洗面所の鏡に映る生まれたままの姿。 小ぶりな胸と長い脚、体全体のラインの細さ、型から胸にかかる長いストレートヘア。 どれも瑠美の体にはないものばかりだ。 (モデル体型だよねぇ、胸だってこれだけあれば十分… でももうちょっとあったほうがいいかぁ…) そういうと再び瑠美はポーズをとったが、すぐに身震いした。 「お風呂入ろ」 シャワーを浴びると長い髪、そして体全体が濡れていく。 湯気の中で鏡に映るさやかの姿はまた美しいものだった。 瑠美も温泉に一緒にいったことがあるがこんな姿は見たことがない。 「きれいだなぁ…」 髪を洗い、体を洗い、瑠美は浴室から出た。 バスタオルで髪と体を拭いていく。 「下着は、っと。」 クローゼットを開け、黒のブラジャーとショーツを穿く。 「さやかの下着着けるなんて…」 思わず鼓動が早くなる。 小ぶりな胸を黒のブラジャーに収め、ショーツを穿く。 下着姿のさやか。 「これが私の体かぁ、風邪引いたりしないようにしないと。」 瑠美はクローゼットからパジャマを取り出す。 厚手の紺色の生地で、襟や袖には白いラインが入っている。 こんなパジャマを着ているさやかが、今頃は家で自分のパジャマを着ている。 「わたしはいいけど、さやかは嫌だろうな」 そんなことを思いながら瑠美はさやかのパジャマを身に着けた。 「あ…」 瑠美は大事なことに気がついた。 今の瑠美はさやかの体。 さやかの髪は長く、乾かすのに時間が掛かる。 「早く寝たいけど乾かさないと…」 ドライヤーで15分。 艶のある黒髪が肩にさらりと掛かった。 「ふぅ。ようやく終わり。」 瑠美は電気を消してベッドに入った。 536 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 57 59 ID 1xeCB708 <14> 翌朝。 ジジジーとけたたましく目覚ましが鳴る。 「うぅっ」 いつもと違う目覚ましの音にビクッと身震いをしたその時… さやかはまたもや瑠美の体の怖さを知ることになる。 「う…ん、起き上がれない…」 大きい胸のせいでいつものように起き上がれないのだった。 両手をついてなんとか起き上がる。 目線の下にはピンクのフリルの生地を持ち上げる二つの膨らみ… 「なに、起き上がるのも大変なの!?」 つぶやきながらさやかは支度を始める。 クローゼットから下着を探す。 フリルや花柄のかわいい下着のセットが所狭しと入っている。 「う~ん、辛うじてこれなら…」 黒い生地にピンクのバラがあしらわれた下着。 身に着けると胸の重みが少し軽くなる。 黒のタートルネック、バーバリー柄のミニスカート。 黒い分目立たないが少しでも下を向くと大きな胸が視界に入る。 いつものファー付の白いコートを着て、 さやかは瑠美として病院へ出かけていった。 瑠美もさやかから遅れること1時間、いつもより遅い起床だ。 すっきりとした胸周りに違和感を感じながらさやかの服を着ていく。 「地味な色が多いんだね。」 ベージュや黒、紺や深緑の下着。 さやかは深緑の上下を選んだ。 昨日着たレトロ柄のワンピース、黒のストッキング。 昨日と違うグレーのコートを着てブラウンのブーツを履く。 玄関の姿身に映るのはどこから見ても、いつものさやかの姿。 「ほんとにさやかなんだ…」 瑠美もさやかとして、家を出て行った。 537 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 58 20 ID 1xeCB708 <15> 二人はお互いの仕事をこなしていく。 瑠美は二人組の受付だったので駄目なときはもう1人に 任せればよかったが… 看護婦になってしまったさやかは初めて見ることばかりだった。 まずナース服への着替え。 どのボタンを外して着ればいいのかわからない。 「上からかぶるのかなぁ…」 普通のナースであればこれでも着られるのだろうが… 今のさやかは胸の大きな瑠美の姿だ。 上からでは胸がつかえる… 「おはよう」と同僚らしき人が声を掛けるが さやかは必死でそれに気づかない。 上から着るのをあきらめ、下から持ち上げる。 力が入る分、胸の部分も引っ張り上げて通すことができた。 ファスナーを閉めるといままでとは違う圧迫感… 「なにこれ…ってぅぅん、遅れちゃう…」 急いで走るとユサユサと揺れるバスト。 「もうなんか痛いよ…」 エレベーターに乗り病棟へ着いた頃にはもうすっかり疲れてしまっていた。 上の空で朝のミーティングに出た後業務開始。 不思議なことに自然と体は動くが知らない人に囲まれ、 ぐったりして昼休みを迎えた。 「看護婦さんって大変…」 休みに入ったのは12時30分。 「まだ休憩中だ。」 さやかは瑠美に電話をかけた。 「どうそっちは?」 「もう大変、瑠美よく毎日やってるよね。」 「慣れちゃえば大丈夫だよ」 「もう午後も不安…」 「あ、今日夜勤だったはず。」 「えぇ!?」 「その分早く帰れるから。私も帰ったらすぐ家行くから。」 「うぅん…」 戸惑ったままさやかは電話を切った。 (夜勤って何?) 受け入れざるを得ない現実に、さやかは途方に暮れた。 午後の勤務を終えたのが午後5時。 さやかになった瑠美も5時には会社を出ていた。 538 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 58 51 ID 1xeCB708 <16> 先に帰ってきたのは瑠美。 何かあったときに部屋に帰れるよう互いの部屋の合鍵を持っていたのだ。 さやかの姿で自分の家に帰る。 いつもより低く見える玄関。 (なんか変な感じ…) 慣れた手つきで電気をつけ、暖房のスイッチを入れる。 15分ほど待っただろうか。 瑠美の姿のさやかが帰ってきた。 「おかえり」 「ただいま」 お互い自分の姿に出迎えられ、二人はリビングのソファーに座った。 さやかが大きく肩で息をする。 「大変だった?」 「大変なんてもんじゃないよ。私にはとてもできないよ。」 「でも、できたじゃない。」 「不思議よね、体は動いたし、職場の人たちもなんとなくわかった。 でも疲れた~」 「夜勤は11時半には病院に行かなきゃだから。早く寝たほうがいいよ。」 さやかは昨日と同じパジャマに着替える。 ブラジャーを外して感じる重量感には少し慣れてきたようだ。 瑠美を見送りながらさやかが聞く。 「そっちはどうだったの。」 「なんともなく過ぎたって感じ。」 「看護婦さんに比べたら楽な仕事だよね。」 「そんなことないよ。おじぎいっぱいして結構大変だったよ。」 「でもそうしてれば終わっちゃうから。寝るね。」 「わかった、おやすみ。」 手を振るさやか。玄関のドアを閉め歩く瑠美。 すっかり馴染んだその様子は まるで互いの体に戻ったかのようにも見えた。 539 名前:砂漠のきつね[] 投稿日:2009/02/25(水) 00 59 12 ID 1xeCB708 <17> それから夜勤をこなしたさやかは 前日からの騒動にすっかり疲れ、家に帰った途端に、 すっかり寝てしまった。 瑠美も夜勤明けであることはわかっていたので、連絡はしなかった。 しかし、それを機に、二人は会う機会がなくなってしまった。 毎日会おうと約束してはみたものの、 入れ替わってしまった驚き、これからの不安。 様々なものが2日もすると消え去ってしまったからだ。 元に戻らなければけないことは分かっていても、 仕事を持っている状況ではなんともし難いのが現状だった。 週末に会えば、と思っていたが、 その週、瑠美になったさやかは どちらも勤務で元に戻る手間をかける時間がなかった。 何より、二人が仕事をこなせていたので 日々の生活に苦労しなかったのだ。 「ひょっとしたら、変わった体の覚えたこととかが、 そのままできるのかな?」 さやかがある日の電話で瑠美に言った。 最初は抵抗があったフリルたっぷりのパジャマにも すっかり慣れてしまっていた。 「そんなことある?」 「だって、身体が他人のものになるのだって、普通じゃ考えられないことなんだから」 「そうだねぇ。そうなのかも。」 この体は他人のもの。 そんな異常事態のはずなのに、 流れる日々にはいつもとの変化を感じられず、 うっかりすると元に戻ることを忘れてしまいそうな二人であった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/261.html
スレ立てした者です。タイミングを見誤ってしまいすみません。レンタル掲示板などで独自に掲示板を作るのは面倒ですかねぇ -- (名無しさん) 2017-01-16 22 08 08
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/92.html
投稿日 2010/03/08(月) それが起きた原因は、間違いなく、私の言葉だろう。 だから、あれは自業自得なのかもしれない。しかし、あんなことになるなんて、 それを口にした当時の私はもとより、他の誰にも予想はつかなかったはずだし、 そもそも自業自得と言うには、理不尽すぎる。 その言葉とは―― 「あんなの、気持ち悪いだけでしょ」 というものなのだが、これだけでは、当事者以外にはなんのことか分からないのは、 仕方のないことだ。TPOをわきまえた結果である。しかし、 「それは咲ちゃんが、気持ちいいセックスをしたことがないからだよ!」 ……馬鹿じゃないだろうか、この子は。人が、わざと言わないようにした単語を、 べらべらと。 「咲ちゃんが今までどんな経験してきたのか知らないけど、わたしと健ちゃんの 愛の営みに比べたらままごとよ!セックスっていうのはねぇ――」 ああ、馬鹿だ。間違いなく馬鹿。本当に馬鹿。常々感じていたけれど、やっぱり 馬鹿だった。頭と背の養分を、胸に取られているという噂は伊達じゃない。 科学的な根拠はなにもないのに、私もついうっかり信じかけた話だったが、 今こそ確信できる。 その馬鹿に、私は冷静に対処した。悲しいかな、彼女の反応は予想の範疇だったからだ。 未だ熱弁をふるう篤子に向かって、私はきっぱりと告げる。 「ここ、教室よ」 「それが――え?あ、あう……」 途端に身を縮める篤子。胸は出っ張ったままだが。 そう、私たちがいるのは、クラスメイトひしめく、休み時間の教室である。 幸い教師は不在だが、いつ来てもおかしくない時間だ。 その中で、篤子は声高に先ほどの台詞を叫び、あまつさえ机を強く叩いて身を乗り出した ものだから、教室中の視線を一身に集めた。 当然、話し相手の私にも視線は注がれているが――まあ、どうでもいい。もう慣れた。 とにもかくにも、これが全ての始まりだった。 「だからぁ、セックスっていうのはねぇ――」 再び休み時間――次の授業が終われば、昼休みだ。 篤子は、口に手を当てて、声をひそめているつもりらしいが――意味がない。 彼女の声はよく通る。 また、こちらをちらちらと覗いてくるクラスメイトらの視線が、気にならない わけではないが、彼らを含め、周りの全てを無視して私は空を見ていた。 どんよりとした雲は、朝から降り出しそうで、なかなか降らない。帰りまでもてばいいけど。 「咲ちゃんって、西野君も斉藤君も向こうから告白してきて、咲ちゃんに自分は 必要ないんだって向こうから離れていったんでしょ?いくらもてるからって、 自分も愛する努力をしなきゃ」 「なんなら、健ちゃんに誰かいい人いないか聞いてみようか?咲ちゃんって どんな男の子が好みなんだっけ?」 昼休み――もはや誰も気にしない。 私は取り出した弁当のおかずに一通り口を付けて、その出来に満足していた。 毎朝お弁当を作るのは面倒だが、もはや習慣だから仕方ない。まあ、大体は昨夜の 夕食の残りだ。 それに一番の理由は、離婚して、幼い私を女の細腕ひとつで育て上げた母の負担を 軽くするためだし。 その母も、今頃私が作った弁当を食べている頃だろうか。 「健ちゃんと同じバスケ部ならねー、山田君とかわたしの一番おすすめだね!あとはー」 「そうだ、咲ちゃんにも彼氏できたら、みんなでどっか出かけようよ。泊まり込みでさ」 今日、最後の授業――数学だ。教師も生徒も、みんな集中している。たった一人を除いて。 中間テストはもうすぐそこだ。高二最初のテストに、皆張り切っているのだろう。たった一人を除いて。 私語など誰もしない。たった一人を除いて。 「それでさあ、夜はみんなで……やだ、恥ずかしい。でも、ちょっとらん――」 「先生、黒板の記述が間違っています」 「あ、ああ、すまんな、早川」 早川。私だ。 「あーん、でもぉ、健ちゃん以外に裸見られるなんて」 「とにかく、咲ちゃんは早く彼氏作って、愛のあるセックスを経験すべきだよ!」 「じゃ、私部活あるから」 放課後――やっと解放される。 私は、水泳部員だ。屋外に存在するプールにはまだ入れないが、もうすぐ解禁。 それまでは、体力作りがメインである。 「え?あ、ちょっと待ってよ。部活終わったらうち来て。今日バイトないんでしょ」 「なんで」 とっさに出た言葉だった――なんで。疑問は後からついてくる。 なんで篤子の家に? 帰宅部の篤子は、わざわざ彼氏の健児が部活を終えるのを待ってから、一緒に帰る。 その後何をしているのかは知らないが(想像はつくが)、わざわざ彼氏との時間を 割くような用事? 「うち来たら教えてあげるからさ。ね?」 十中八九、先ほどまで続いていた(彼女の中だけで)話題についてだろう。断る方が 懸命だ。しかし、 「ね?」 なんで、手を合わせて片目を閉じるなんて可愛いことができるかな。実際可愛いし。 「……わかったわ」 ため息をつく。仕方ない。私が彼女のこういう頼みを断れないことも、もう慣れた。 なんで、断れないのか。彼女と私が、幼なじみだからとしか、言いようがない。 篤子とその彼氏、健児が付き合い始めて、二ヶ月ほどになる。 もっとも、付き合い始めたのは二ヶ月前だが、それまでに紆余曲折があった――一年ほど。 ほとんど恋愛漫画のようなイベントをこなし、二人は結ばれた。彼女らをくっつけるため、 私も少なからず尽力したので、当然自分のことのように喜んだが――こちらの 世話まで頼んだ覚えはない。 毎日、篤子からのろけを聞かされるのも面倒だというのに。 だいたい、今のところ私は、恋人など必要としていない。部活やアルバイトで手一杯だ。 『咲は、好きじゃないんだろ』 突如脳裏に浮かんだ言葉に、走っている足がもつれそうになる。今日の部活動は、 結局雨は降らなかったので、学校横の土手をマラソンだ。 『いつも、俺のことなんて二の次三の次じゃないか。結局、俺の片思いだったって、 思い知らされたよ』 それは、西野だか斉藤だか、もはや顔もよく思い出せない相手が、別れ際に 吐いた言葉だった――勝手なことを…… 私は、強く歯を食いしばると、自らの余力も気にせず、振り払うようにスピードをあげた。 篤子の家は裕福だ。彼女自身は、問われても否定するだろうが。 広い庭に一戸建て。家屋は、地下一階から地上三階まである。だが流石に、 家政婦などはいないらしい。 部活を終えて、気が乗らないまま自転車を押して歩き続け、本当なら10分で着く 道のりに30分かけた。 そして私は今、篤子の家――松岡邸の門前にいる。 さて、どうしたものか。もちろん、チャイムを鳴らして知らせるべきだが、 このまま帰るという選択肢もある。今日がアルバイトや、母が早く帰ってくる日なら、 即断できるのだが。 少しの間悩み、意を決して―― 「咲ちゃんおそーい」 「え、ああ。うん」 見計らったように出てきた篤子に連れられて、私は間違った選択肢の方へ歩みを進めた。 篤子が私を案内したのは、篤子の部屋ではなかった。地下だ。 「なにする気?」 意図が分からないので、聞いたのだが、篤子ははぐらかすだけだった。 そして、地下の一室に私は招かれた。 暗闇に包まれたその部屋は、とても不気味だ。いったいここで何をする気だろう。 篤子は『楽しいこと』だと言っていたが。 室内に入るよう促され、ついに足を踏み入れる。篤子が先陣を切っているため、 変なことはないと思いたい。そんな中、篤子は気楽に言ってきた。 「実はね、咲ちゃん」 「なに?」 「わたし、魔法が使えるようになったの」 「……は?」 「今から、見せてあげるね」 その言葉とともに、こちらが訝しむ間もなく、床が光り出す。その光は、幾何学的な 模様を描いていた。 光が、次第に強くなり――私の意識すら、真っ白に染め上げた。